【三千家「初」釜記】(1)白か黒か 準備は靴下の選択から

茶会に参加するにあたって最初に購入した袱紗ばさみ、扇子、楊枝、懐紙、白靴下(左上から時計回り)
茶会に参加するにあたって最初に購入した袱紗ばさみ、扇子、楊枝、懐紙、白靴下(左上から時計回り)【拡大】

 京都に拠点がある新聞各社は1月、茶道裏千家、表千家、武者小路千家の初釜にそれぞれ招かれるのが、慣例になっている。新聞社の京都総局長(支局長)なら、茶のたしなみがあって当然のように言われることもあるが、弊社の場合、概ねそうではない。少なくとも私はそうではない。

 産経新聞京都総局には、そんな総局長たちが頼りにしてきた引き継ぎ書がある。出処は不明だが、どうやら他社も含め経験者から聞いた話に、個人的な感想を交え、伝えてきたものらしい。

 ほぼ素人間の引き継ぎだけに、どこまで信じていいのか疑問がないわけではないが、『ポイントとなる礼さえおさえておけば、細かいところは気にせず大丈夫』という言葉に背中を押され、初めて三千家の初釜に出席させていただいた。

 茶席に向け、総局に近い大丸京都店の茶道具コーナーでまず買い求めたのは、懐紙一束、扇子、楊枝と楊枝入れ、そして、これらを納める袱紗(ふくさ)ばさみだった。さらに、下着コーナーで白い靴下も購入した。

 白の靴下?と思われる人もいるかもしれないが、茶席ではダークスーツであっても、白足袋の代わりとして黒より、清潔な白色の靴下をはく方が礼儀にかなっている、という。

 念のため他社に確認すると、「白で行くと、(作法を)わかっていると誤解され、上席に案内されてしまう危険があるらしいんですわ」と深読みし、あえて黒で通すという総局長もいた。

 白か黒か-。迷ったが、少しでも清廉な気持ちで茶席に臨むために、ここは引き継ぎに沿って新しい白靴下を用意し、玄関先で重ね履きすることにした。

 引き継ぎにはご祝儀には「寿」か「年賀」と書く、とある。わざわざ京都寺町の書画用品の老舗「鳩居堂」で書いてもらう社もあるとも…。しかし結局、当日受付で筆書きで署名する必要があるとのことなので、私は観念して自筆にした。ただ、その字を見かねた妻が、次の祝儀から代筆してくれるようになったことは、ここで正直に告白しておく。

 新聞社各社が参加する三千家の初釜の日程は、それぞれ毎年固定されており、裏千家今日庵(京都市上京区)の初釜式が最初となる。期間中、東京を含め計約4500人が招かれ、三千家のなかでも最大規模の初釜だ。

 1月7日、いよいよその日が来た。(山口敦)

 初めて出席した三千家の初釜は、京都の新春をより深く味わう貴重な機会となった。これからどこかで茶の湯に出会うかもしれない人の慰みになれば幸い。「初めて」の目線から、その奧深いもてなしの世界の一端を紹介する。

 三千家 茶道の流派のうち、千利休直系の表千家(不審庵)、裏千家(今日庵)、武者小路千家(官休庵)の三家をよぶ通称名。千利休の孫宗旦の三男宗左が表千家、四男宗室が裏千家、養子になって塗師をなりわいにし晩年、千家に復した次男宗守が武者小路千家を立てた。いずれも京都市上京区に拠点を置く。千家が三つに分かれたのは、利休切腹による断絶の経験を踏まえ、リスク回避の意味があったとされる。