【受験指導の現場から】スマホ中毒の本当の怖さを知ってますか? 合否の分かれ目にも (5/5ページ)

 で、どうしたか? さすがに「今までのように、ゲームOKにしましょう」とはいかない。そこで、こういう案を出した。「ちょうど夏休みから生活パターンが変わりますので、ご家庭でのルールを新しくしてはどうですか。朝早く起きてゲームをするのはOK、朝食後は夕方まで塾の授業ですから、その後は夕食と入浴が終わるまでのあいだはゲームOK、それ以降は禁止にして宿題をやる時間とし、寝る直前もダメ-というかたちでどうですか?」と。

 じつはこの生徒、通塾の往き帰りに寄り道をする癖があり、時折問題視されることもあったのだが、夏期講習期間中は一目散に家に帰るようになった。

 1日の終わり方がとりわけ大事

 大人の場合、「翌日にストレスを持ち越さないためには、1日を愉しい時間で終えることが大事」というのが筆者の持論なのだが、同様に受験生の場合、「1日を有効な時間で終えることは極めて大事」だと考えている。

 なぜなら、眠る直前の時間に何をインプットしたかが、知識の積み重ねや系統化に大きな意味を持っていると考えているからだ。脳には短期記憶域と長期記憶域が別々に存在するらしいが、この事を筆者なりのたとえ話にしてみたい。

 短期記憶域はパソコンのメモリー、長期記憶域はパソコンのディスク、その2カ所とは異なる各記憶を結びつける脳内ネットワークはパソコンのインデックスに対応する。メモリーには、その日に知覚した情報がランダムに書き込まれている。1日の途中でメモリーがフルになると、重要ではなさそうな情報から順に上書きされて消えていく。そして睡眠中には、メモリーに残っている情報のうち、重要そうなものから順にディスクに保存され、インデックスが更新される。

 歳をとるとよく、「覚えているはずなのに出てこない」ということがあるが、これはディスクから情報が消えてしまったからではなく、インデックスの該当部分が壊れたか消えてしまったからだと考える。現に、同じ世代が同じ事を学ぶ場合、かつてその内容を勉強したことのある人のほうが、初めて勉強する人よりも速く習熟するはずだ。これは単純な知識だけでなく、方程式や図形に関する問題にも当てはまれば、勉強以外の技能的なことにも当てはまる。つまり、学び直しはインデックスの再構成に相当する。

 翻って、眠る直前の時点で脳が(勝手に)重要と判断した情報から順に長期記憶域に定着し、ネットワークを強固にしていくのだとすれば、当然、長時間接していた情報、直前に触れていた情報のほうが、より優先的に記憶され体系化されていくことになる。

 筆者が、受験生にとって眠る直前の過ごし方が極めて重要と考えるのは、以上のような理由からだ。この30分のあいだ、脳を受験に関係のない情報に晒すのか、受験に必要な情報をインプットするのか、ここにも合否の分かれ目がある。

【プロフィール】吉田克己(よしだ・かつみ)

吉田克己(よしだ・かつみ)京都大学工学部卒。株式会社リクルートを経て2002年3月に独立。産業能率大学通信講座「『週刊ダイヤモンド』でビジネストレンドを読む」(小論文)講師、近畿大学工学部非常勤講師。日頃は小~高校生の受験指導(理数系科目)に携わっている。「SankeiBiz」「ダイヤモンド・オンライン」で記事の企画編集・執筆に携わるほか、各種活字メディアの編集・制作ディレクターを務める。編・著書に『三国志で学ぶランチェスターの法則』『シェールガス革命とは何か』『元素変換現代版<錬金術>のフロンティア』ほか。

【受験指導の現場から】は、吉田克己さんが教育に関する様々な情報を、日々受験を志す生徒に接している現場実感に照らし、受験生予備軍をもつ家庭を応援する連載コラムです。更新は原則第1水曜日。アーカイブはこちら