日本古来の伝統医療である柔道整復術が今年、国による公認から100年目を迎えた。柔道整復師の全国組織である日本柔道整復師会(日整)では、100年の節目を機に、技術のいっそうの向上を図るとともに、「匠(たくみ)の技 伝承プロジェクト」を4月にスタートする。確かな知識と技術を後世に伝えることを目的に整復師の育成を目指す。(原口和久)
◇
◆嘉納治五郎氏ら尽力
一般に「ほねつぎ」「接骨」として知られる柔道整復術は、日本古来の骨・関節損傷の治療法で、江戸時代に体系化され、接骨業を営む柔術家が数多くいた。
しかし、明治維新以降の社会制度の近代化に伴い、医師でなければ接骨業を開業できないことになり、柔術家による接骨業は消滅の危機を迎えた。
こうした事態を憂慮した講道館の創始者、嘉納治五郎氏や嘉納氏の門弟で接骨業を営んでいた萩原七郎氏らが存続の運動を起こし、その結果、大正9(1920)年に内務省令で「柔道整復術」として公認され、昭和11(1936)年には健康保険の取り扱いが認められた。戦後の28(1953)年には日整の前身となる全日本柔道整復師会が設立、柔道整復業界は順調に発展してきた。
◆実務経験を義務化
ところが平成に入ると、規制緩和に伴って開業する柔道整復師が急増。技術の低下が目立つようになり、利益重視の考えから、あまり必要でない施術で治療費を請求するようなケースが増えてきたという。