高見国生の認知症と歩む

(17)「盗まれた」と言われたら (1/2ページ)

 Aさん夫婦と同居しているAさんの母親(85)が、最近、「モノがなくなった」と言い出しました。「モノ」とは、数年前から施設に入っている父親のセーターや下着などです。それだけならいいのですが、母親はAさんが盗んだと電話で兄弟に言っているようで、時々兄や弟から、それとなく確かめるような電話が来たりします。

 Aさんと妻は共働きで、日中は留守にしているので、母親はその間に電話しているようです。なぜそんなことを言うのか、自分はどうすればよいのかとAさんは頭を抱えています。「近所にも言っているかもしれない」と心配もしています。

 年齢からみて、母親に認知症が始まったと考えていいでしょう。母親の心理を想像すると、ずっと世話をしてきた夫の衣服がなくなっているのに気づいた(本当は母親が片付け忘れたか、夫が施設に持参したのかもしれない)のですが、認知症の人は困ったことが起きたら人のせいにする特徴があるので、Aさんを犯人にして自分を守っているのではないでしょうか。

 「自分は盗んでいない」と説明しても母親は納得しません。こういう時は、母親に分からせようとするのでなく、兄弟や近所の人に母親の状態を話して理解してもらう方が現実的な対応です。母親のそんな状態を近所の人に話すのは恥ずかしい、と思うかもしれませんが、認知症はけっして恥ずかしい病気ではありません。知ってもらった方が近所の協力も得られます。また、これから兄弟が協力して母親の介護をするためにも、兄弟には早く伝えることが大切です。

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