高見国生の認知症と歩む

(20)症状改善が心労の種に

 施設などで、職員が熱心に介護をしたことで、認知症の人の症状が改善されることがあります。しかし、それが家族にとっては心労の種になることもあるのです。

 一人暮らしだった女性(91)の認知症が進み、その上、車椅子生活のため自宅で暮らすことができなくなり、本人の承諾も得て特別養護老人ホームに入居することになりました。施設に慣れるために、しばらくショートステイを利用していたところ、「歩ける人にはできるだけ歩いてもらおう」という施設の取り組みで、女性は少し歩けるようになりました。すると自信をつけたのか、「入居はしない。家に帰る」と言い出しました。女性の子供たちにしてみると、「えっ、それは困る。もう一人暮らしはできない」です。

 子供たちにも生活があり、わずかに歩けたといっても認知症の症状のひどい母親を自宅に引き取ることはできません。母親が元気になるのはうれしいことですが、そのために私たちの負担が増えるなら、喜んでばかりはいられません、と娘さんは言います。施設の善意の取り組みが家族の負担を増やす-。これをどう考えたらいいのか。なかなか難しい問題です。

 この場合は、在宅での介護は無理という前提で対応を考えるべきだと思います。どうやって女性に納得してもらうか。それは女性が「ここ(施設)に住んでもいいな」と思うようにすることです。それには、家族の“説得”より、施設職員の対応の方が効果があります。プロの人たちの努力に期待しましょう。家族は、女性の人生や趣味などの情報をたくさん提供し、職員に協力することが大切です。

 しかし、私の友人には義父の終末期でもっと深刻な思いをした人がいます。それは次回に。=次回は8月23日に掲載

                   

【プロフィル】高見国生

 たかみ・くにお 認知症の養母を介護し、昭和55年に「認知症の人と家族の会」を設立。平成29年まで代表を続け、現在は顧問。同会は全国に支部があり、会員数約1万1千人。

                   

 「認知症の人と家族の会」電話相談 平日午前10時~午後3時、0120・294・456

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