ライフ

安易に降りれば貧困へ 「とりあえずは専業主婦」幻想の恐るべき現実 (4/4ページ)

 経済的困窮に喘ぎながらも専業主婦を選ぶ人たち

 世帯年収が300万~400万円台、またはそれ以下の専業主婦家庭は、中流の暮らしはもはや期待できません。中流の暮らしを期待できない収入水準(世帯年収500万円未満)にある専業主婦世帯の割合は、調査年によってやや異なっているものの、おおむね3~4割前後の水準で推移しています。

 言い換えれば、専業主婦の3人に1人は、経済的困窮に喘ぎながらも専業主婦でいることを自ら選んでいる、または余儀なくされていると考えられます。大阪市在住の裕子さん(仮名、2011年11月質問紙調査)もそうした経済的困窮下にある専業主婦の1人です。

 「子ども手当を(4カ月ごとではなく)毎月受け取りたい」、36歳(年齢などはすべて調査当時、以下同)の裕子さんがアンケートに寄せたその要望から、彼女とその家族の火の車のような家計の事情の一端が窺えます。生活費の高い大都市に住みながらも、家族4人の生活は、夫の額面年収400万円に頼らざるをえません(JILPT 第1回「子育て世帯全国調査」の回答結果を基にした記述)。

 親の持家に居候して住居費を切り詰めているものの、毎月の生活費を賄うのがやっとで、貯蓄がまったくできない状態だといいます。家族旅行の年間回数はゼロで、経済的に負担できないため、6歳と2歳の娘を習い事や学習塾に行かせることもできないとのことです。

 「専業主婦」モデルに囚われる人々

 今では経済的に苦しい暮らしを余儀なくされている裕子さんですが、専業主婦となる6年前までは、大学卒の夫とともに正社員として働き、暮らし向きは大変ゆとりがありました。それでも、正社員の職業キャリアの継続ではなく、「出産→退職して専業主婦に→3歳までは自宅保育→3歳~5歳に幼稚園を利用」という、伝統的な専業主婦コースを選んだ裕子さん。保育所の利用を申し込んだことは、これまでに一度もありません。いや、保育所を利用しながら働くことは、裕子さんのライフプランにはそもそも含まれていませんでした。

 裕子さんの現状は、まさに「専業主婦」モデルに囚われている状態とも言えます。将来、2人の娘を4年制大学に通わせたいという計画は漠然とあるものの、教育費の貯蓄の見通しをまったく立てられていないのが現状です。子育てが一段落してから再就職することを希望しているものの、あくまでも家事の傍らでの仕事を希望しており、「通勤時間が短い」「土日祝日に休める」「就業時間の融通がきく」ことを、主要な就業条件として挙げています。しかし、このような理想に合致した職場は、果たして本当に見つけられるのでしょうか。

 裕子さんのジレンマは、低収入「専業主婦」家庭の行き詰りを表す縮図のようなものです。彼女たちは、従来の「専業主婦」モデルに従いライフプランを立てていますが、現実はそのプランから遠ざかっていくばかりです。それにもかかわらず、現実を見据えてのライフプランの修正ができずにいる専業主婦は、大勢います。その1つの典型例が、「貧困専業主婦」なのです。

周 燕飛(しゅう・えんび)
 1975年中国生まれ。労働政策研究・研修機構(JILPT)主任研究員。大阪大学国際公共政策博士。専門は労働経済学・社会保障論。主な著書に『母子世帯のワーク・ライフと経済的自立』(第38回労働関係図書優秀賞、JILPT研究双書)等。

 (労働政策研究・研修機構(JILPT)主任研究員 周 燕飛 写真=iStock.com)(PRESIDENT Online)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus