今どきワークスタイル

(9)がんと仕事の両立支援 (4/4ページ)

 キャンサー・ソリューションズの桜井なおみ社長は「治療中の患者と経営者や同僚の間には認識のギャップがある。患者は、つらい、不安という気持ちを共有してほしいと思っているのに、いきなり制度の話を持ってこられてもなかなか受け入れられないだろう」と指摘。「制度は運用して初めて生きてくる。情報共有のためにも患者と会話をし、個々に配慮した柔軟な運用が求められているのではないか」と話している。

                  

 ■復職後にジレンマ どこまで伝える?

 がんは治療経過も副作用も、人それぞれ。患者は、復職しても、以前のように働けないことにジレンマを抱えたり、迷惑をかけたくないと無理をしたりしてしまう。

 東京都の会社員、吉川佑人さん(31)は、23歳で胃がんと診断された。胃の全摘手術を受け、その後、新卒で入った会社を退職。体調が戻ってから就職した前の会社では、同僚には胃がんのことは言わなかった。「お荷物と思われたらどうしようという不安がありました」と吐露する。

 元気になっていると思われ、体力的にきつくても終電まで働いたこともあった。同僚からの食事の誘いは断ることも。胃を摘出しているため、食べられないものもあり、かなり時間がかかるからだ。

 病気や治療の経過について、どこまで職場で情報を共有するかは難しい。「すごくつらかったけれど、働いたことで体力もついたし、スキルも身についた。無理して良かったと思えるけれど、再発していないからこそ言えることかもしれません」と吉川さん。どうすれば良かったのか、今も答えはないという。(油原聡子)

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