終活の経済学

お寺のトリセツ(3)終末期に僧侶に頼る (3/3ページ)

 「『施設に送ってしまったがこれで良かったのか』『兄弟が協力してくれない』などさまざまな悩みを持たれている方がいます。そんな不安や悩みを共有することが、この会の目的。介護を終えた方のお話も、介護中の参加者の心の支えになっているようです」(香念寺、下村達郎住職)

 思い詰める前に、お寺に足を運んでほしい。

 「枕経」 危篤の人は僧侶を呼んでいた

 昔、死を前にした人にとって、お坊さんは、死後の恐怖を取り除いてくれる力強い存在だった。「枕経」と呼ばれるものだ。

 枕経とは仏教の臨終行儀の一つで、亡くなりゆく人の枕元に僧侶が寄り添って行う儀礼(お経)を指す。死の恐怖やあの世に逝く不安を和らげて安心を与えるため、また、仏弟子となり心穏やかに往生することを説く。浄土真宗では臨終勤行といい、枕元ではなく仏壇か掛軸の本尊に向かって読経する。お経の内容は宗派によって違う。

 かつては自宅で亡くなる人が多く、枕経は、臨終の際に菩提寺の僧侶が駆けつけて勤めるのが普通だった。しかし病院で亡くなる人が増え、菩提寺との関係も希薄になった現代では、死後に故人に対して行う最初の儀礼として認知されている。

 地域や宗派によって異なるが、死後に行われる枕経の基本的な流れは次の通り。(1)自宅へ遺体を搬送する(2)菩提寺に連絡する(3)遺体を北枕にして(西向きでもよい)安置し、枕元に枕飾りと呼ばれる小さな祭壇を設ける。これらは菩提寺または葬儀社が用意する(4)枕経を行う。時間はおおよそ30分。遺族は普段着でよい(5)通夜・葬儀の日程を決める(6)遺体を納棺するまで、枕飾りのろうそくと線香を絶やさないように「枕勤め」をする。

 なお、住宅事情によっては斎場へ搬送・安置した後や、通夜の前に行うこともある。お布施は、葬儀やお通夜での儀礼分も含めてまとめて渡せばよいが、お車代は必要になる。本来、「死にゆく人」を対象とした儀礼(お経)だが、「死んだ人」に対する儀礼へと変わりつつある。本義とは離れることもあり、省略されることも多くなってきた。(『終活読本ソナエ』2019年夏号から、随時掲載)

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