ゆうゆうLife

家族がいてもいなくても(616)パソコンを直してくれる人

 久しぶりに上機嫌な朝を迎えた。

 ガラス戸を開けて、庭に出ると、澄んだ朝の光の中でブルーベリーの木の葉が赤く染まっていた。

 花が少なくなり寂しくなっていた秋の庭で、そこだけが燃え立つよう。

 この小さな2本の木は、私の部屋の前にある。それで、「あなたのよ」と言われている。つまり、面倒をみる係ということなのだけれど、面倒のみかたが分からない私は、「自力で育てよ」とほぼ眺めているだけ。

 その木の紅葉が美しい…、と思うと、いっそう愛しさが増してくる。目をあげると、遠く那須の山々が連なっていて、すでに日常になっている風景がことさらにうれしい。

 この私の上機嫌は、前夜から続いている。と言うのも、ここ1週間ほど、仕事が忙しい最中にパソコンがおかしくなった。

 「ファイルをアップロードするために必要な権限が確認できません」などと、意味不明な警告が出て仕事の原稿が書けなくなっていた。

 おかげで、四苦八苦。

 なぜか自分でなんとかしよう、という無謀な思い込みに走り、とりあえず原稿をメール文にして送ったり、手書きで書いてFAXしたりなどしつつ、「ああでもない、こうでもない」と一人、悪戦苦闘していたのだ。

 さすがに、その効率の悪さにギブアップ。狂ったパソコンをなんとかしてくれる人に出張を頼んだところ、その人が優秀だった。那須から郡山に出掛けた帰り道に寄ってくれて、1時間、パソコンのキーボードを目の回る速さで華麗に打ちまくり、正常に戻してくれたのだった。しかも常設用とお出かけ用の2台のパソコンを同期させてくれて、一層便利に使えるようにしてくれたのだった。

 おかげで、にわかに上機嫌になり、酒盛り中の食堂に行ったら、「昼間に来た時と今とでは、別人のようだ」と言われた。

 「気持ちがここまで表情に出せるなんて、いいよねえ」だって。

 そう言えば、ここ数日「疲れてない?」とか「目が充血している」とか、いろんな人に言われていた。元気だとか元気じゃないとか周りに気づかれていたことに、私は驚いてしまった。

 その夜は、上機嫌でワインやウィスキーをついつい飲んだが、悪酔いもせず、「やっぱり、一人じゃないって、いいことかも」とベッドに倒れ伏すようにしてぐっすりと眠ったのだった。(ノンフィクション作家・久田恵)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus