がん電話相談から

Q:子宮頸部微小浸潤がんで子宮全摘を勧められたが

 ■円錐切除術では不十分 狭窄・閉鎖のリスク残る

 Q 40代後半の女性です。今年6月に自治体の健診を受け、子宮頸(けい)がんの疑いで要精密検査の通知が来ました。8月に病院を受診。画像検査ではっきりと写らないため、検査を兼ね、子宮頸部の円錐(えんすい)切除術を受けました。その結果、子宮頸がんの「IA1期」で、リンパ節転移はなしという診断でした。子宮の全摘出を勧められました。

 A 初期の子宮頸がんは、肉眼的に病巣を認識できない上皮内がんや微小浸潤がんです。がんの顔つきで扁平(へんぺい)上皮がんか、腺がんに区別され、子宮頸部を被覆する粘膜上皮の浸潤の有無やその程度によって進行期が分類されます。今回は、子宮頸部の円錐切除術の結果、扁平上皮がんで、粘膜上皮の下方(深部)1・5ミリの深さまで浸潤していて、浸潤部の広さ(子宮頸管に平行な縦方向の長径)は2ミリとのことですから、微小浸潤がんIA1期という診断になりました。

 Q 比較的軽いがんなのですね。それなのに子宮全摘はなぜ必要なのでしょうか。

 A IA1期では、若年で妊娠・出産の希望があれば、円錐切除術で治療を終了させることがあります。円錐切除術で治療を終了させるためには、(1)円錐切除術の切除ライン(円錐の底面の円の辺縁粘膜、円錐の頂点の頸管側粘膜、円錐の側面)に異形成と呼ばれる前がん病変やがんを認めないこと、(2)手術後に定期健診を怠らないこと-の2つが必須です。

 Q 私の場合はどうですか。

 A 閉経後や50歳未満でも月経が不順の場合には、円錐切除術での治癒率は80%未満に低下します。このため、子宮全摘を勧めることが多いのです。閉経後の方や月経不順のケースでは、円錐切除後に子宮頸管の狭窄(きょうさく)・閉鎖が起きやすく、将来の適切な検査も難しくなります。

 Q そんなリスクがあるのですね。

 A 子宮筋腫などの良性疾患では、子宮頸部筋層に切り込んで子宮を摘出することが許容されます。子宮周囲の癒着が激しい場合に子宮頸部近くを走行する尿管損傷を避けるためです(単純子宮全摘術といいます)。

 しかし、初期の子宮頸がんではこれは許容されず、子宮の周囲組織(子宮を支える靱帯(じんたい)や腟壁)を数ミリ以上つけて摘出します。その際、良性疾患の単純子宮全摘術と区別するために、初期の子宮頸がんの子宮摘出術は、拡大単純子宮全摘術と呼ばれることがあります。この術式は広汎子宮全摘と比べ、排尿障害などの後遺症は著しく軽く、良性の単純子宮全摘術と同じ程度です。

 Q できれば開腹手術は避けたいのですが。

 A あなたの場合は磁気共鳴画像装置(MRI)検査でリンパ節転移がないとのことですので、リンパ節を触診したり生検する必要はないかと思われます。子宮摘出は開腹による摘出術のほか、腟式子宮全摘術や腹腔鏡による子宮摘出術も可能です。どの術式を選ぶか、主治医と相談して決めてください。(構成 大家俊夫)

                   

 回答には、がん研有明病院の瀧澤憲医師(婦人科前部長)が当たりました。専門医やカウンセラーによる「がん電話相談」(がん研究会、アフラック、産経新聞社の協力)は月~木曜日(祝日は除く)午前11時~午後3時に受け付けます(03・5531・0110、無料)。個人情報を厳守します。相談内容が本欄やデジタル版に匿名で掲載されることがあります。

                   

 《ミニ解説》

 ■少しの浸潤の差でリンパ節切除も

 初期の子宮頸がんでも、その進行度などによって手術の内容が変わってくる。瀧澤医師によると、粘膜上皮の深部3~5ミリまでの浸潤ならIA2期となる。さらに、浸潤の長径が7ミリを超えると、浸潤の深さに関わらず、IB1期になるという。

 瀧澤医師は「少しの浸潤の差ですが、IA2期やIB1期と診断されれば、IA1期より広範囲に子宮を摘出し、リンパ節も郭清(かくせい)(切除)する必要があります。健診で早期発見されれば、手術も軽度になる可能性があります」と話している。

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