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災害ボランティア 「今度は私が手伝いに行く番」 受けた支援、次の被災地へ

 2019年の台風19号の被災地で、かつて災害を経験した地域による支援の輪が広がっている。2004年の新潟・福島豪雨や新潟県中越地震で生まれた新潟県長岡市の災害支援団体「チーム中越」は、阪神大震災を受けて発足した神戸市の「被災地NGO協働センター」と共同で、恩返しの思いを込めた「おたがいさまバス」を運行。これまで約10回、約300人のボランティアを栃木、長野両県などに運んだ。

 栃木県は河川の氾濫が相次ぎ、各地で多くの家屋が浸水。チーム中越は「甚大な被害なのに他の被災地に比べて知られていない。このままでは忘れ去られてしまう」と支援に力を入れてきた。

 栃木県佐野市の神社で19年12月、参加者38人がスコップや一輪車などを使って作業した。

 「ばらばらにやるより、一斉に集めよう」。参加者の高校生が声を掛け合い、敷地に堆積したわらなどを積み上げた。長岡高2年の五十嵐護さん(17)は「被災地で働く看護師になりたくて、初めてボランティアに参加した。『楽しい』と言っていいのか分からないけど、友達と力を合わせるのは楽しい」と笑顔だ。

 サッカー部の仲間と参加した中越高2年の山田啓太さん(17)は、04年の水害で被災し、ボートで救助された記憶がある。「災害は人ごとじゃない。体力が余ってる僕らが頑張らないと」と照れくさそうに話した。

 この地域では少子高齢化が進み、神社の復旧には手が回らない。地元の町会長、谷寛行さん(68)は「地域の中心に台風の爪痕が残ってしまい、ずっと気掛かりだった。たくさんの人が助けてくれて、本当にありがたい」と声を震わせた。

 かつて支援を受け、今回の活動に参加した人も。栃木県栃木市で土砂のかき出しをした新潟県三条市の武藤元美さん(63)は、水害で被災した際、息子の友人たちが駆け付けてくれたという。「多くの人に自分は助けられた。人が集まれば、つらくても明るい気持ちになる。手を差し伸べることが被災者の皆さんの力になると思った」

 チーム中越の坂谷辰己さん(67)は「地元では災害を経験して『今度は私が手伝いに行く番だ』と思いに駆られる人は多い。支援を呼び掛け続けたい」と力を込めた。

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