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小児まひ、虐待乗り越え…足こぎ車いすでホノルルマラソン完走の石井隆司さん

 ポリオ(小児まひ)によって手足に障害があり、歩行も困難な東京都足立区の自営業、石井隆司さん(69)が、足こぎ車いすで、昨年12月8日(現地時間)に米ホノルルで開催された「JALホノルルマラソン2019」のフルマラソン(42.195キロ)に挑戦し、12時間54分30秒で完走した。長年憧れ続けた大舞台で練習の成果を発揮し、「時間制限がなく、楽しむことができた。応援も素晴らしかった」と振り返る。

 かつて日本でも大流行したポリオに感染したことで、手足にまひがある石井さんは、幼い頃に両親が離婚。母の再婚相手から殴られるなど日常的に虐待を受け、中学校もわずかしか通わせてもらえず13歳から働き始めるなど、苦労を重ねてきた。

 「氷水に手を突っ込んだときに感じる、しびれるような痛み」は常に消えることはなく、ふさぎ込んで酒に溺れることもあった。「自ら命を絶とうと何度も思ったこともあった」というが、知人を介して約2年半前、まひの残る体でも軽い力で操作できる足こぎ車いすに出合った。

 自由に動ける喜びを知り、気持ちも前向きになった。ホノルルマラソン出場以前に6回にわたってマラソン大会に出場し、10キロのコースも完走した。「体は老化しても、心は若いままでいられる。人生が変わった」と語る。

 「来世の夢は、自分の足で砂浜を走ること」と語る石井さんにとって、ワイキキビーチやダイヤモンドヘッドなど、海岸に沿ったコースを走るホノルルマラソンは、長年の憧れだった。

 早朝にスタートするレースは、「10キロ地点以降、孤独だった」という。スピードのある選手はすでに見えなくなっている。だが、ホノルルマラソンは時間制限を設けていないため、焦ることもなく、自由に休むこともできた。ダイヤモンドヘッドに近い10キロ地点付近の上り坂で見えた朝日や、ゴールが近づくにつれ視界に入った夕焼けに感動したという。

 ホノルルマラソンでは、性別、年齢に関係なくさまざまな人が楽しみつつ走る姿を目にした。「心底、走りを楽しんでいるんだな」。本番では普段愛用している足こぎ車いすを使い、伴走者もつけずに挑んだ。「心の支えになったのは応援してくれた人たちだった。不思議と1人で走っている感じはしなかった」(吉原実)

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