高見国生の認知症と歩む

(32)階段が下りられない

 Kさん(76)は、同い年の妻を介護して10年。最初のうちは生活への支障もなく、妻は趣味に打ち込んだりしていましたが、ここ数年の間に症状が急速に進みました。

 まず歩行が不自由になり、排(はい)泄(せつ)の失敗が始まりました。

 歩行は、少し歩くとうずくまるようになり、歩行器もうまく使えず、やがて車椅子になってしまいました。そのため、夫婦の楽しみであった美術館や映画館にはほとんど行けなくなりました。Kさんは、それがいちばん寂しいと言います。

 排泄はトイレの床をぬらすことから始まって、夜中に布団を汚すようになりました。紙パンツとパッドの組み合わせにさんざん悩み試行錯誤しました。防水シートやポータブルトイレにも詳しくなりました。

 3年前は要介護2でしたが、今は要介護5です。デイサービスとショートステイを組み合わせての在宅介護でしたが、ショートステイは2カ月前に予約しておかなければなりません。変更も不自由です。そのため昨年から、泊まり・通い・訪問のある小規模多機能施設を利用するようになりました。

 普段は日帰り(デイサービス)で、Kさんに用事があるときは泊まりの介護もしてもらえて安心感も大きくなったのですが、最近になって自宅前の5段の階段を、支えれば自力で下りられていた妻が下りられなくなったのです。階段昇降ができるという車椅子で試みましたが、支えるために大きな力がいり下りられません。メーカーの説明書には「70歳未満の人が扱うこと」とあります。「老老介護では使えません」とKさんは嘆きます。

 このままでは、施設に通うことができません。さて、どうしたものかとKさんは考えていますが、まだ解決方法は見つかっていません。

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