「極限状態」「体力的にきつかった」。クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で起きた新型コロナウイルス集団感染で、ウイルス陰性と確認された乗客らの一部が19日、下船した。約2週間にわたり感染の恐怖におびえながら船内で「隔離」を強いられた乗客らは「やっと帰れる」と安堵。疲労の色を強くにじませながら帰路についた。
ダイヤモンド・プリンセスでは、19日午前11時ごろから、荷物を持った乗客が次々と船外に。乗客らは用意されたバスなどに乗り込み、横浜港を後にした。自衛隊員や防護服を着用した関係者のほか、海外メディアを含む大勢の報道陣が集まり、現場はものものしい雰囲気に包まれた。
夫婦で乗船していた、さいたま市の男性(77)は「体力的にきつかった。まずは喜びたい」と、バスに乗り込んだ。船内待機中は、衛星放送が主な情報源で「バスからの景色が少し新鮮に見えた。情報も少なかったので浦島太郎のような気分」と話した。
神奈川県内の70代男性によると、船内では7階のデッキと15階のデッキで毎日1時間散歩できる時間があり、その時だけ客室外に出られたという。「2メートル以上離れるよう言われ、マスクをつけた人たちが距離を空けて黙々と散歩する光景は異様だった」と振り返る。「私の部屋は窓やベランダがあったので何とか耐えられたが、窓のない部屋の人は精神的につらかっただろうと思う」と話した。