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ラスト10分の空恐ろしさ 仏映画「レ・ミゼラブル」のラジ・リ監督が語る (1/2ページ)

 昨年のカンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞し、今年のアカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされた仏映画「レ・ミゼラブル」のラジ・リ監督が来日し、作品への思いを語った。本作は、ヴィクトル・ユーゴーの小説「レ・ミゼラブル」と同じタイトルを冠しているが、リ監督は「(小説が書かれた)150年前と同じような悲惨(ミゼラブル)な暮らしが、今も続いているので付けた」と話した。(文化部編集委員 水沼啓子)

 映画の舞台は移民や低所得者が多く住み、犯罪多発地区となっているパリ郊外のモンフェルメイユ(セーヌ=サン=ドニ県)で、ユーゴーの小説にも登場する。モンフェルメイユ出身で現在も同地に住むリ監督が実際に見聞きしたことを基に、フランス社会が抱える暗部をリアルに描いている。監督自身、西アフリカのマリ共和国からの移民二世でもある。

 映画は、サッカー・ワールドカップ(W杯)フランス大会が開催された1998年という設定だ。冒頭にフランスが優勝を果たし、仏国旗をはためかせながら、仏国民が歓喜に沸く様子が映し出されている。

 当時18歳だった監督には、生涯忘れられない夢のような日だったという。「悲しいことにフランス社会は分断されている。唯一、あの時だけは肌の色も、社会階級も関係なく一体化したんだ。でも翌日にはまた移民系と元々いたフランス人とに分断している。そんな現実を見せたかった」という。

 映画ではモンフェルメイユのボスケ団地が舞台。ギャング同士の縄張り争い、暗躍する犯罪組織、子供たちにも容赦がない警察官たちの横暴が描かれている。「フランス中で最も貧しく、今も荒れている地区だ。この映画は、暗に無能な政治家や体制を非難しているんだ」と話す。

 監督自身、10歳のときに理由もなく警官に職務質問された経験がある。「そのときのことが、トラウマになっている。フランスの警官には、子供に職務質問する権限はないけれど平気でやるんだ。『俺たちがいるから、お前らは悪いことできないぞ』という見せしめでやっている。職務質問されるのが嫌だから、子供たちは何も悪いことをしていないのに警官の姿を見ると身を隠すようになる。逃げるから警官も追いかけてくる。そんな悪循環の中で悪者に仕立てられていくんだ」と語った。

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