ヘルスケア

難しい福祉施設内の感染予防 集団感染を防ぐ根本的な取り組みが必要に

 千葉県東庄町の障害者福祉施設「北総育成園」で入所者と職員の58人の新型コロナウイルス集団感染が明らかになり、加藤勝信厚生労働相は29日、専門家の派遣を表明するなど対応を進めた。県などによると施設の入所者は個室で生活していたが、作業をグループで行ったり、食事は食堂で一緒に取っていた。同様の福祉施設は全国に存在しており、入所者や職員の感染予防の難しさも露呈。施設内での集団感染を防ぐ根本的な取り組みが必要となりそうだ。

 千葉県は29日、北総育成園で発熱など症状の出ていない入所者や通所者ら約50人の検査を進めた。同施設の設置主体である同県船橋市の松戸徹市長は28日夜に会見を開き、こう語った。

 「大きな危機感を抱いている。今後、保健所や県の支援を得ながら、対応していく」。

 県や市によると、施設には20~80代の70人が入所し、職員67人が勤務していた。このほかに通所や短期の利用者が計9人いるという。ドアノブなどのアルコール消毒は行っていたが、マスクは不足していた状況にあった。市は集団感染の判明を受け、ガウン500枚、マスク2100枚、ゴーグル50個などの必要となる物資を施設に搬送した。

 端緒となったのは27日に同施設で調理担当だった40代女性職員の感染が判明したことだ。これを受け、県が入所者や職員を一斉に検査したところ、女性職員を含む58人の集団感染が発覚した。

 女性職員は23日に発熱し、24日は出勤したがすぐに早退していた。ただ、県などによると、施設では10日ほど前に、別の職員が発熱などの体調不良を訴えていたこともあった。感染ルートは不明という。

 一方で、陽性が確認された職員32人のうち8割にあたる26人は無症状だった。自覚症状のないまま、職員と入所者の接触が続き、施設内で感染が拡大したとみられる。

 入所者の中にはマスクを着用しても嫌がってすぐに外してしまう人もおり、障害が重い入所者の中には、自身の症状を職員に伝えることが難しかったケースもあるようだ。

 市によると、施設職員に複数の感染者が出たことから、職員が不足するため、県内の社会福祉法人に協力を求める方針だ。ただ、同様の福祉施設でこうした集団感染が相次げば、入所者の生活支援が立ち行かなくなる恐れも懸念される。

 東京医療保健大の菅原えりさ教授(感染制御学)は「対応に当たる職員らは防護用具を着用しないといけない。感染制御に慣れていない可能性があるので、行政などがサポートしてほしい」と指摘する。

 県は今回の集団感染を受け、県内の福祉施設に対し、職員に不要不急の外出をさせないことや、体調がすぐれない職員は出勤させないように通知した。

 森田健作知事も「発熱やせきがあれば出勤せずに自宅療養を」と呼び掛けている。

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