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今、国民が必要とする「支援」は何か 新型コロナ経済対策

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、経済活動の縮小が顕著になり、国民生活を圧迫し始めている。政府の緊急経済対策案は二転三転し、所得が大幅に減少した世帯を対象に、現金支給する案を軸に検討されている。しかし、対象の世帯の線引きや給付方法など課題は多く、給付も5月以降になる見通しだ。今、国民が必要とする支援は何か。(鈴木俊輔、入沢亮輔、石川有紀)

 「スピーディーな対応を」

 「お客さんは3割は減った。家賃や光熱費の支払いもしんどいが、店を閉めるわけにはいかない」

 訪日外国人客(インバウンド)の増加で観光スポットとしてにぎわった大阪・新世界で、居酒屋「春」を営む花浦広子さん(75)はため息をつく。新世界では、感染拡大で外国人を中心に観光客が激減。平日でも多くの人が行き交ったが、今では閑散とした空気が漂う。

 娘とともに店に立つ花浦さんだが、すでに経営も苦しくなっているという。「このままでは日々の生活に関わる。ばらまきといわれるかもしれないが、スピーディーに支援してほしい」。現金給付を求めるが、「給付されたとしても、このままでは店の資金に使うしかない」ともぼやく。

 ミュージシャンも「不安」

 新型コロナにより、全国的に外出の自粛を求める動きが広がっており、各種イベントが相次いで中止に。小規模事業者やフリーランスなど個人事業主の中には、生活の危機に直面している人もいる。

 関西を拠点に活動するミュージシャンの天宅しのぶさん(52)は結婚式やホテルのラウンジでの演奏など、4~5月だけで約10件の仕事がキャンセルになった。「飛んだ仕事がどうなるのか現状では不透明。例年5、6月は結婚式の仕事が多い時期だが先が読めない」と不安を口にする。

 音楽仲間も同じ状況だといい、「大きなライブはすべて中止になり、TVの収録くらいしかないと聞いた。周りには仕事が減って生活が苦しくなっている人もいる」と話す。

 流行が収束する時期は見通せない。天宅さんは「早く収束してほしいが、収束してもすぐにイベントがあるわけじゃない」とし、「不安はあるが、不安に押しつぶされるより、練習をするなど建設的な時間にしたい」と話す。

 「商品券が消費効果に期待」

 日本総研の試算では、新型コロナによる出控えやインバウンドの落ち込みで、今年の国内の経済成長率はマイナス1・9%と予測される。関西の外食や旅行などサービス関連消費の減少額は、2~4月の3カ月で約4900億円に上る。

 緊急経済対策は、所得が減った世帯を対象とする方針だが、多くの場合は食費や光熱費などの生活費に使われることが想定される。若林厚仁関西経済研究センター長は「現金を一律にばらまいても経済的に困らない人は貯蓄に回す可能性もあり、消費への効果は商品券などで期間や使途を限る方が期待できる」と指摘。「新型コロナによる消費不振が長引けば雇用にも影響し、景気後退につながる恐れもある。消費を支える対策とともに中小企業向けの減税や無利子融資など支援が必要だ」と話している。

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