ヘルスケア

在宅患者ケア コロナ警戒、訪問拒絶例も発生 感染防止へ看護師ら知恵絞る

 新型コロナウイルスの感染拡大が、在宅患者をケアする訪問看護にも影響を与えている。訪問自体が患者の感染リスクを高めるため、訪問を断られるケースも出てきた。看護師らは感染防止の徹底に知恵を絞るが、現場での対応に限界も。識者からは国に指針の策定を求める声も出ている。

 防護服の代わりに雨がっぱ、ゴーグルはファッション用眼鏡とクリアファイルで作製-。東京都江戸川区の「ウィル訪問看護ステーション江戸川」は感染を防ぐために、市販品を活用している。

 医療機関では外来患者からの院内感染を防ぐ対策を講じているが、訪問看護では逆に、在宅患者に感染させないよう万全を期す必要がある。岩本大希所長は「治療に当たる医療機関に資材が届かなくなれば大変」と気遣いつつ「在宅看護の現場は、守らねばならない」と気を引き締める。

 在宅でケアを受けるリハビリテーション科や精神科などの患者やその家族が感染を恐れて「来ないで」と訴えるケースも出てきた。その場合もできる限り、電話で症状確認や薬の相談指導、リハビリの助言をする。

 職場の看護師からは患者の感染が分かった場合にどう対応すればよいか戸惑う声も上がり、岩本所長は有志と海外の文献を参考に手引を作成。同じような悩みを持つ看護師らのためインターネットにも公開している。

 埼玉県熊谷市の「熊谷生協ケアセンター」も状況は同じだ。看護師はプラスチック板で手作りしたフェースシールドを常に持ち歩く。ただ感染者が出て事業所が閉鎖になった場合、どうするかという課題にぶつかった。

 田中順子所長は、つながりのある事業者に依頼することも検討したが、できるだけ看護師が速やかに駆け付けられる仕組み作りが重要と考えた。

 そこで医療者向けの非公開会員制交流サイト(SNS)を使い、周辺の約20事業所が連携し、情報共有できる取り組みを始めた。幸い地域で閉鎖した事業所はまだないが、田中所長は「ケアが必要な在宅患者がいる限り、行かないという選択肢はない」と話す。

 ただ主治医からの指示書がなければ訪問看護はできないため、事業所が変わると改めて指示書を取る必要があるという。

 高崎健康福祉大の棚橋さつき教授(在宅看護学)は「感染症に関する国の具体的な指針があれば事業所も対応しやすいはずだ」と指摘している。

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