ゆうゆうLife

家族がいてもいなくても(646)刈れる私は、まだ枯れない

 自分用の「草刈り機」を買った。

 なにしろ、種まきをした原っぱのクローバーがぐんぐん育っていく。それを見ているうちに焦ってきた。密度のあるいい草地を作るには、「伸びたら刈る」「伸びたら刈る」を怠らないことと、言われていたのだ。

 しまいにその「伸びたら刈る」のフレーズが頭の中をリフレインして止まらなくなってきた。

 なんとかしたい。が、物置きにある共有の草刈り機はエンジン式。使う自信がない。電気式なら使えそうだが、原っぱには電源がない。

 焦る思いでネットを検索していたら、「女性でも楽々刈れる充電式草刈り機」を見つけた。

 思わず購入ボタンをクリックした。このコロナ禍で仕事が減ったというのに。介護保険も年金も今後どうなるか分からないのに。高いモノなんか買っちゃって、と一瞬気落ちした。

 が、翌日、即急で届いた品物に即刻、気分が盛り上がった。

 すぐに車に積み、畑で作業中の知人に組み立て方を教えてもらいに出掛けた。結果、全部やっていただいた上に、「大丈夫か?」と心配されつつ扱い方の指導も受けた。

 作業中には呼ばれても振り返らないこと、なにか起きたら電源を切る、きょろきょろせずに前方をしっかり見て集中すること。装備は、長袖、腕カバー、ゴム手袋、帽子、保護メガネ、脛(すね)当てなど、準備万端。

 そして、草刈りの当日。

 空は朝から突き抜けるように高く澄み、暑くも寒くもない中、1人もくもくと作業を開始した。

 伸びすぎたクローバーの表面を慎重になでるように刈っていったら、なんと下から新たに小さな密なクローバーが次々あらわれて、全体がいい感じになっていった。

 充電式なので稼働時間は30分。草地の刈り込みを終えた後にも、まだ少々の余力が残っていた。

 夢中になると、なにかとやりすぎる私にはこの充電式は、程がよい。これを毎朝続けたら、心身が鍛えられ、たくましくなるにちがいないと思った。

 その日、ケムシに刺されるというアクシデントはあったものの、「結構、やるじゃない!」と自分で自分を持ち上げつつ、まだ草刈りができる自分にほっとした。

 家に戻ってシャワーを浴びながら、長く願っていた「上機嫌な朝」を迎えるって、このようなさりげないことへの達成感だったのね、としみじみしてしまったのだった。

(ノンフィクション作家)

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