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契約を増やしている「孤独死保険」 現代社会の難題を浮き彫りに (2/2ページ)

 少短から始まった孤独死保険だが、ここ数年で大手損害保険各社も参入している。損保ジャパンは、2年前に火災総合保険の特約として、孤独死保険の販売を始めた。

 契約者の井上喜禎さん(62)に取材を申し込むと、日当たりのよい2階建てアパートに案内され、「ここで孤独死が起きました」

 東京都との県境、埼玉県草加市内の閑静な住宅街。「新聞が溜まり始めて不審に思い、カギを開けたら亡くなっていた。70代の男性で、心筋梗塞でした」。保険料は物件により変動するが、このアパートは12戸室で1棟月額1310円。井上さんは、所有する8棟すべてに孤独死保険をかけた。

 入居者の7割が65歳以上。多くが単身者だ。「お嫁さんに遠慮してか、子供が近くにいるのに1人で暮らしている年寄りも珍しくない」と、ライフスタイルの変化によるリスクも指摘。「保険料は大家として、自己防衛の安心料だと思っています」

 損保ジャパン新宿支社の舩越剛支社長(52)は、前任地の熊本で熊本地震(平成28年)を経験。その2年後、熊本県や住宅関連法人らと連携して「保証人不在被災者の民間賃貸住宅入居に関する連携協定」に参画した。「単身者の仮設住宅から民間賃貸への転居を円滑化するために、孤独死保険を活用。被災者のセーフティーネットに役立てた、先駆け的な取り組みでした」と舩越さん。

 民間賃貸住宅への入居を拒まれがちな単身高齢者の住居を安定的に確保する支援策として、新宿区は5月、孤独死保険料の助成制度をスタート。都市計画部住宅課の担当者は「問い合わせが多数寄せられ、反響は大きい」と話す。

 昔のような大家族では起こりえなかった孤独死。発見までの時間がかかるほど、故人の尊厳は失われ、後始末の費用は膨大となってゆく。他者とつながり、無縁から有縁(うえん)へ…。保険商品が現代社会の難題を浮き彫りにしている。

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