書評

『猫を棄てる 父親について語るとき』村上春樹・著

 ■亡父の苛烈な従軍体験克明に

 世界的な人気作家が亡き父の苛烈な従軍体験を克明につづり、雑誌掲載時から反響を呼んだエッセー。親子で飼い猫を海岸に捨てに行った子供時代の不思議な挿話に始まり、父の従軍記録と負の記憶が語り起こされる。自身と父との間の軋轢(あつれき)と和解も明かす。

 全編を貫くのは父が抱え続けたトラウマを継承する覚悟だ。「目を背けたくなるようなことであれ、人はそれを自らの一部として引き受けなくてはならない。もしそうでなければ、歴史というものの意味がどこにあるだろう?」。代表作「ねじまき鳥クロニクル」などを読み解く視座を与えてくれる。(文芸春秋、1200円+税)

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