全国で連日1千人を超える新型コロナウイルスの感染者が報告される中、政府の分科会で示された感染状況の分析では、愛知や沖縄で感染拡大速度が第1波に近づいているとの懸念が示された一方、感染者が最多の東京は高止まり状態となるなど地域によって評価が分かれた。6項目の指標を目安にした感染拡大防止策は都道府県に委ねられ、専門家は各県の要請に応じた行動自粛を呼びかける。
感染状況の指標である人口10万人当たりの1週間(7月30日~8月5日)の感染者数は東京17・41人、愛知14・38人、大阪14・37人、福岡16・58人、沖縄30・21人で、いずれも前週より大幅に増加している。
ただ、発症日ベースの感染者数は、東京が7月10日ごろから横ばい状態で、分科会メンバーで国立感染症研究所の脇田隆字所長は「急激に上がっているわけではなく、すぐに下がってもいかない状態」と説明する。
医療態勢をみると、東京では1日数十人の入院患者が生じ、病床を圧迫する一方、分科会が注視する重症者数はこの1週間22~15人で推移し、全国的にも重症化する人の割合は低い状況が続いているという。
1人の感染者が平均何人にうつしたかを示す「実効再生産数」は1週間(7月12~18日)の平均値で、東京を含む関東圏が緩やかな拡大傾向である「1・1」だったのに対し、沖縄は「3・2」で「クラスター(感染者集団)から流行拡大傾向」と評価された。
東京から関東、さらに関西、中京、九州と地方に広がった今回の波の感染状況をどう捉えればいいか。
東京医科大の濱田篤郎教授(渡航医学)は「東京は倍々には増えていないが、高止まり状態で、再び急増すれば感染爆発する。感染拡大の速度が急激に上がっている大阪や愛知では、重症者が一気に増えると医療機関が逼迫(ひっぱく)する。医療機関が少ない沖縄は医療崩壊しかねない」と指摘する。
各県が独自の緊急事態宣言を出すなど行動自粛の動きを強めるのは、地域住民と危機意識を共有している表れといえる。観光支援事業「Go To トラベル」を継続し、お盆の帰省にも自粛を求めない政府との間には温度差があるようにうつる。
濱田氏は「地域住民は日々の感染者数に一喜一憂する必要はなく、各県の対応をきちんと把握し、自身の行動変容につなげてほしい」と強調する。