教育・子育て

「児童労働」がインド経済脅かす 家計悪化で就学不能、将来の財政リスク増

 新型コロナウイルスの感染拡大の中、世界で最も深刻とされるインドの児童労働問題が悪化している。新型コロナで困窮した家計を支えるため、多くの子供が学校を辞め、農場や工場などで働かざるを得なくなったためだ。子供がこのまま教育を受けられず「失われた世代」となれば、インド経済にとっても大きな打撃になる。

 封鎖中に591人救出

 ノーベル平和賞受賞者のカイラシュ・サティヤルティ氏が設立した市民団体「BBA(子ども時代を救え運動)」は世界最大規模となるインドのロックダウン(都市封鎖)中に591人の子供を強制労働の現場から救出した。

 市民団体はロックダウン中に出稼ぎ労働者が都市から大量流出し、労働力が不足していることで、労働に駆り出される子供が増えると警鐘を鳴らしている。子供は違法かつ過酷な条件下で働かされている可能性が高いが、実態把握は難しい。

 インドではコロナ流行前から子供の教育機会喪失の問題が深刻化していた。ドイツの物流大手DHLインターナショナルの2018年の調査では、インドの未就学児童は5600万人以上で、バングラデシュ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムの合計の2倍以上に上る。

 国際労働機関(ILO)によると、インドの未就学児童のうち約1010万人が「基幹労働者」または「縁辺労働者」として働いている。

 ILOは世界の児童労働が過去20年に減少傾向にあったものの、新型コロナ危機によってその成果が覆される可能性があると指摘している。今年だけでも世界で約6000万人が貧困に陥ると予想され、家族は生活のために子供を働きに出さざるを得なくなっている。

 ILOと国連児童基金(ユニセフ)が共同で発表した報告書によると、貧困が1%増加すると、児童労働が少なくとも0.7%増加するという。

 世界で4番目に人口が多いインドネシアでも貧困から学校に通えなくなり、労働を強いられる子供が急増するとみられている。ILOの推計によると、同国の約1100万人の子供が労働者として搾取される危険にさらされており、スラウェシ島、東ヌサ・トゥンガラ州、パプア州など開発が遅れている東部でのリスクが特に高い。

 損失試算7250億円

 インドの子供が教育を受けられず「失われた世代」となった場合、同国の経済に多大な影響を及ぼす恐れがある。教育が受けられないことで子供の生産性や所得が減るだけでなく、政府が徴収する税収も減少し、ひいては貧困層への各種手当に伴う財政負担増につながるためだ。

 DHLは子供の教育機会喪失による生産性の観点からみたインドの経済的損失を同国の国内総生産(GDP)の0.3%に相当する67億9000万ドル(約7250億円)と試算している。

 市民団体は児童労働者数の急増はこれからが本番と警告している。インドで経済活動の再開が加速すれば、出稼ぎ労働者が仕事をさせるために子供を連れて都市部に戻るリスクがある。

 国際児童福祉NGO「SOS子どもの村」のプログラム・コーディネーターを務めるアビシェーク・クマール氏は「ホテルや建設工事、鉄道など全てが再開すれば、故郷へ戻った出稼ぎ労働者が子供を都市に連れて行く」と予測している。(ブルームバーグ Shwetha Sunil)

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