新型コロナウイルスの流行が始まってから生活が変わり、運動不足になったという人も多いようです。糖尿病で通院している60代後半の男性患者さんは、コロナ禍で運動することが減ってしまっていました。しかし、多めの体重も気になり、最近になって運動を再開しました。そのかいあって糖尿病はなかなかよい状態が保てているのですが、本人は「運動しているのに体重が一向に減らないのですよね」とこぼしています。
近年、米国をはじめ、世界では一般的に、健康維持のために必要な運動量として、週150分の中等度、もしくは75分の高強度の有酸素運動と週2日の筋力トレーニングが推奨されています。
そこで米国人を対象に、この推奨運動量を行うことと死亡率の関係を調べた研究が行われ、7月に英国の医学雑誌に報告されました。48万人の米国人を対象に平均約9年観察し、推奨されている運動量をこなすかどうかで、病気での死亡率に違いがあるかどうかを調べています。これによると運動量が少ない人に比べ、週150分以上の有酸素運動だけを行う人では29%、週2日以上の筋力トレーニングだけを行う人でも11%死亡率は低くなっていました。
さらにその両方を行っている人では40%も死亡率が低下していました。疾患別に見た場合、心血管病、がん、慢性肺疾患でも同様の結果が見られました。筋力トレーニングだけ行っている人よりも、有酸素運動だけ行っている人の方が幅広くいろいろな病気で死亡率が低下しています。また150分の中等度の運動よりも75分の高強度の運動の方が若干ですが効果は大きくなっていました。
ダイエットのために運動したとしてもその効果は体重を2%減らす程度とされています。それでも運動は慢性疾患の予防や治療に効果的ですし、このように死亡率を減らし寿命を延ばします。その男性患者さんには、たとえ体重が減らなくても運動は効果的なので、続けることをお勧めしました。運動は意味がないのでは、と考え始めていたようで、「それを聞いて安心しました。頑張って続けます」とおっしゃっていました。(しもじま内科クリニック院長 下島和弥)