著者は語る

湯淺正敏氏 『広告会社からビジネスデザイン・カンパニーへ』

 日大法学部特任教授・湯淺正敏氏

 広告クリエーティブによる事業領域の拡張

 広告会社の既存事業である、広告媒体ビジネスは、マスメディアの広告媒体としての影響力低下、国内消費市場の縮減、ニューコンペティターによる広告・マーケティングサービス分野への浸食などを考えれば、既存ビジネス領域への依存だけでは、持続的成長性は困難な状況です。

 そのため、既存事業の改善はもとより、一方では、コア・コンピタンス(中核能力)を生かした新事業創出は、広告会社の生き残り策として喫緊の課題となってきました。

 今後、産業が発展していくためには、企業にとっては新事業領域の開発は成長エンジンであり、そのためにはイノベーションは欠かせません。そして、企業のイノベーションを促す、新しい着想、活性化にこそ広告会社が長年培ってきた、コア・コンピタンスであるクリエイティビティを活用すべき時に来ています。

 数年前から「広告会社の将来像を広告やブランディングを超えた、変革期のクライアントの成長に欠かせない『イノベーション』を生み出すパートナーとしての広告会社、いわばクライアントの事業開発という事業領域(ドメイン)をデザインする、ビジネスデザイン・パートナー(カンパニー)を目指すのが広告会社3.0である」と提唱してきました。

 また、広告クリエーティブの拡張については(1)コンテンツ(2)テクノロジー(3)社会的課題(4)製品開発-の4分野との融合領域を提示。(1)は、従来の広告手法である商品をストレートに売るより、魅力的なコンテンツの提供といったコンテンツマーケティングの手法へシフトしている点。(2)は、アドテクノロジーの活用により、広告配信・取引の自動化が進んでいる点、(3)は、持続可能な開発目標(SDGs)が企業の経営課題となってきたことにより、企業ブランディングにも社会性、ジャーナリズム的なテーマへのメッセージ性が必要になってきた点。(4)は、広告会社が、クライアントの製品開発に関与するようになってきた点です。

 広告会社が未来の産業と生活トレンドを予測する事業開発インサイト(洞察)と新事業創出のためのクリエーティビティーを発揮し、クライアントの新事業創出の事業支援を行う段階では、ブランディングパートナーから事業開発パートナーへ新たなクライアントとのパートナーシップの構築へ発展していくことが期待されています。(8500円+税、ミネルヴァ書房)

【プロフィル】湯淺正敏 ゆあさ・まさとし 広告会社の博報堂勤務(主に媒体部門、媒体開発部門)を経て、2003年に大学教員に転身。04~19年まで日本大学法学部教授。研究領域は、広告産業論、メディア産業論で、「広告論」「メディア/情報産業」などの科目を担当。大学院も担当し、いち早く「メディアイノベーション講座」を立ち上げた。湯淺ゼミナールで指導したかつてのゼミ生総勢200人は、各業界で活躍している。現在法学部特任教授。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus