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古井戸を調べてみたら温泉だった 埼玉・越生に新たな観光資源

 関東三大梅林の一つ「越生梅林」で知られる埼玉県越生町で、同県内では初めてという乳白色の温泉が見つかった。宿泊施設内の使われていなかった井戸の水を検査したところ、温泉だったと判明したのだ。温泉の掘削には多額の費用がかかるだけに、「降って湧いた」ような観光資源の登場に地元は期待を膨らませている。

 きっかけは、宿泊施設「ニューサンピア埼玉おごせ」が昨年3月、レジャープールの水を自前でまかなえないかと、施設内の古井戸を調べたことだった。

 くみ上げた水は白くにごっており、一見しただけでプールでの使用には適さないと分かった。井戸の内部を洗浄してみても、にごりが解消されることはなかった。

 総支配人の山田純さん(46)は落胆したが、ある従業員がつぶやいた一言が引っかかった。

 「このにごり、なんだか温泉みたいですね」

 ひょっとしたら本当に温泉なのかもしれない-。山田さんは昨年6月、長野県の検査機関に井戸水を送った。約2週間後に届いた分析書には「温泉の資格を有す」と記されていた。分析によると、水素イオン濃度(pH)は10・3で、肩こりが解消されたり肌がなめらかになったりする効能が期待できるという。

 その後、埼玉県や保健所にさまざまな許可をとり、営業開始の準備を進めた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で一時は工事が滞ったが、山田さんは「温泉の開業は経営回復の起爆剤になりうる」という判断を曲げずに、今年8月にオープンにこぎつけた。

 ニューサンピア埼玉おごせには以前から温泉施設が併設されていたが、自前の乳白色温泉の集客効果はてきめんで、今年10月の利用者数は前年同月の約1・5倍に増えたという。

 越生町や町観光協会も、今後は温泉を活用したまちおこしに取り組んでいく方針だ。町に多くの観光客が詰めかける時期は、越生梅林で梅の花が見頃を迎える春に限られてきたが、温泉であれば季節を問わず人を呼び込むことができる。

 町観光協会の担当者は「越生町は東京都内からのアクセスが良い。『遠くに行かなくても良質な温泉がある』と広くPRしていきたい」と話した。(竹之内秀介)

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