主張

不妊治療 負担減と質担保の両立を

 菅義偉首相の看板政策である不妊治療の保険適用の実現に向けて、政府・与党の検討作業が本格化している。

 子供がほしいのに、費用が高くて不妊治療を諦める。そんな現状は早急に改善すべきである。

 首相は年末に保険適用に向けた工程表を策定する考えだ。適用が実現するまでの間は、現行の助成制度を大幅に拡充して対応する。

 いずれにおいても、大切なのはいかに患者に寄り添えるかだ。その点を銘記し、治療を受けやすい制度を確立してほしい。

 不妊治療は現在、一部に保険が適用されているが、体外受精や人工授精などには適用されず、自費で治療しなくてはならない。

 平成30年に体外受精で生まれた子供は約5万7千人である。16人に1人が体外受精で生まれている状況を踏まえれば、保険適用で治療を支える意義は大きい。

 そのためには、さまざまな観点からの検討が必要である。

 一般的に治療や薬に保険を適用する際には、効果と副作用に基づいて、治療法、処方内容、対象患者が決まっている。それが質を担保することになるからだ。

 不妊治療では、医療機関により治療法や薬の種類・量が異なることも多く、保険適用で一定の標準化を図ることは欠かせない。治療の分かりやすさにもつながる。

 標準から外れる一部の先進的な医療や試験的な治療は、いわゆる「混合診療」にあたる保険外併用療養を認め、保険適用と適用外の治療を併用してはどうか。患者にとって真に有益で、質の高い仕組みを考えるべきである。

 安心して不妊治療を受けるには柔軟に仕事を休めるよう職場環境も整えなくてはならない。自民党の議員連盟は12日、若い世代のがん患者について、抗がん剤治療などで不妊リスクが生じる可能性を踏まえて精子や卵子を凍結保存することを支援するよう首相に要望した。こうした点もきめ細かく検討する必要があろう。

 もちろん、保険適用までの措置となる現行制度の拡充にも万全を期したい。今は体外受精などの初回治療に30万円、その後は15万円などの助成があり、助成額の引き上げや所得制限撤廃などが政府・与党で検討されている。患者の期待に応えるためにも、編成中の令和2年度第3次補正予算で具体化を図ることが重要である。

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