教育・子育て

コロナ禍で続くひとり親世帯の苦境 行政とフードバンクが支援 (1/2ページ)

 新型コロナウイルスの影響で暮らしに困っている子育て家庭に、食品を届けるための拠点「フードバンクセンター」が12月、奈良市内に設立される。企業や家庭で余った食料を預かって、こども食堂や福祉施設などに提供してきた民間のフードバンクの活動と、自治体が連携した新しい取り組みだ。新型コロナが再び感染拡大して、ひとり親世帯などの困窮は長引いている。食べ物を配る支援が急務となる中で、全国的にみても先駆的な試みとなる。(安田奈緒美)

 こんな時だからこそ

 約20トン。市民や企業から寄贈された食品を、こども食堂や社会福祉施設などに無償で提供しているNPO法人「フードバンク奈良」(奈良県斑鳩町、渡辺一城代表理事)のもとに、今年4月から6月にかけて寄せられた米や缶詰、即席めんなどの食べ物の量だ。給食中止によって余った食材が届いたり、「こんな時だからこそ」と保存食を持ち寄る人が増えたりして、直前の3カ月に比べて4倍以上の入荷量になった。ただ、その一方で、人が集うことが制限され、活動休止を余儀なくされたこども食堂などへの提供が難しくなっていた。

 「新型コロナで経済的に苦しくなり、一層困っている親子がいるはずで、そういった子供たちに食べ物を渡したいのに、コロナの影響で届けられないジレンマを抱えていた。個人のご家庭からの問い合わせも増えているが、完全ボランティアで、人手も足りない私たちにできることが限定されていた」。フードバンク奈良の副代表理事、平川理恵さんはこう打ち明ける。

 箱を開けたらお菓子

 それでも、なんとか食べ物を必要としている人たちに届けたい。今年4月と5月、フードバンク奈良は地元の奉仕団体の協力を得ながらひとり親家庭など約220世帯に米やレトルト食品、菓子などを詰め込んだ段ボールを送付した。

 「箱を開けたらお菓子が見え、子供たちのテンションが上がりました」「子供たちは特にお菓子やジュースが嬉しかったようです」

 届け先からは、感謝の言葉が相次いだという。

 実際、コロナ禍でひとり親世帯の生活の厳しさは増している。奈良市が今年7月から8月にかけて市内のひとり親家庭などを対象に行ったアンケートによると、回答のあった163件のうち約53%が「収入が減少した」と回答。現在必要としている支援について複数回答で尋ねたところ、「経済的な支援の充実」の137件に次いで「食料品を無料で受け取られたり、配達してもらえること」が70件と多かったことも分かった。

 こういった状況を踏まえ、同市は食料支援の枠組み作りが急務と判断。社会的、経済的に困っている子育て世帯の食を支える「フードバンクセンター」の設立を決めた。子ども育成課の池田有希課長は「今、必要とされているサービス。もったいないをありがとうに変える活動に行政も関わりたい」と話す。

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