終活の経済学

コロナ時代の葬儀社選び(2)業者の歴史と種類を知ろう

 一口に「葬儀社」や「葬祭事業者」といっても、いろいろな種類がある。届けも登録もなく始めることができる仕事とあって、新規立ち上げや参入も激しい。葬儀を考えるときに戸惑わないように、葬儀社の歴史や種類をみてみよう。

 専門葬儀社

 1956年に設立された全日本葬祭業協同組合連合会(全葬連、旧・全日本葬祭業組合連合会)。加盟事業者は地域の慣習や葬送儀礼文化などを熟知する、いわば“街の葬儀社”だ。利用者向けに「分かりやすい説明」「見積もりを出す」等を規定した「全葬連葬祭サービスガイドライン」を定めている。経済産業相認可の葬儀専門事業者の全国組織で、コロナで亡くなられた方の対応でも国と業界を結ぶ橋渡しをした。

 「全国一律」と対極にあるのが全葬連。事務局長の南正毅さんは「100人いれば100通りの葬儀があり、葬儀社も1社ごとに特徴がある。葬儀は決まったプランで行うものでも、まとめていくらというものでもない。ご遺族の希望に合ったプランを提案し見積り書を出してくれるか、しきたりなど知識を有しているか、スタッフの対応や雰囲気が合うかなどをポイントに選べばよいと思う」と話している。

 なお、全葬連に加盟していない専門葬儀社も多く存在する。

 互助会

 60年代から全国的に普及した。毎月一定の前払い金(数千円)を積み立てて「互助会会員」になると、婚礼や葬儀のサービスを安価に受けられる仕組み。「平安閣系」「玉姫殿系」などのグループがある。

 73年に社団法人全日本冠婚葬祭互助協会(現・一般社団法人、全互協)が設立され、経済産業省より割賦販売法の許可を受けた互助会が加盟。全国に結婚式場約1000カ所、斎場約3000カ所を有する。

 葬儀品質認定制度、ブライダルプロデューサー資格制度などを定め、会員互助会サービスの質の向上に努めているという。

 「故人が会員であることを知らずに別の葬儀社に頼んでしまった」といったケースでも、後日の解約で手数料を除いて返金できる仕組みを整えている。

 JA葬祭

 葬儀には地域や集落の相互扶助で成り立ってきた側面がある。農協を窓口に、大正時代ごろから、農機具と同様に高価な祭壇を農家が共同利用するようになったことが始まり。

 48年に現在の農業協同組合(JA)が発足したころから、「葬儀全般も農協で請け負ってほしい」との声があり、葬祭事業がサービス業態化していった。現在は再編が進み、全国およそ600JAがあるが、各JAによって葬祭サービスは異なる。

 斎場や物品・スタッフまですべてJAが担う「自賄型」(約半数のJAで可)、地元専門葬儀社と連携する「提携型」、窓口だけJAが担い、葬儀は専門葬儀社に任せる「委託型」とがある。

 「山間部と都市部とで葬儀の形式が違うなど、地域ごとの葬送文化の違いに合わせて、それぞれのJAごとに、葬祭事業が発展してきた経緯がある。そのためJA葬祭には統一したプランはない」(JA東京中央セレモニーセンター社長の丹野浩成さん)

 JA葬祭は農協の組合員および組合員の親族(みなし組合員)の福利厚生の一環としてされるサービスが主だが、地域住民も利用できる。

 生協

 生協が葬祭事業に参入した代表例は、89年に兵庫県葬祭事業協同組合連合会とコープこうべが業務提携し、生協独自事業として「クレリ葬」というブランドを立ち上げたことだ。利用するには、1口1000円程度からの出資をする生協組合員になる必要がある。

 札幌や岩手、愛知県の豊田市など全国6カ所には独自の斎場があり、直営で葬祭業を運営している。ほかの生協は地元の専門葬儀社等と業務提携して運営している。

 事業企画本部事業支援部の高多洋さんは「直営以外では、生協が窓口となって信頼のおける専門葬儀社を仲介し、提携先の葬儀社のプランを割引で利用できりたりするケースもあれば、提携先葬儀社と独自のプランを作ってところもあるなどさまざま」と話す。

 また、日本生協連のコーポレートサイトでは全国の生協の葬祭サービスの紹介窓口があり、各都道府県で展開している生協の葬祭サービスの内容を確認することができる。

 ネット葬儀斡旋業者

 自社で葬儀を行うのではなく、窓口業務に特化して葬儀を斡旋(あっせん)する事業は、小規模・ローカルな事業としては以前からあった。それが一気に存在感を持ったのは、2009年にイオン(現イオンライフ)が始めた「全国一律」の価格による「イオンのお葬式」。前後して、ITによるマッチング技術をもったベンチャー企業が、葬儀の仲介業に一挙に参入してきた。

 特徴としては、「価格や細目が明示されている」「全国一律料金」「安価を強調する」ことなどが挙げられる。「不透明なところが多い」「費用が高い」という利用者の不満から生まれたサービスといえよう。

 仕組みは、斡旋業者が窓口となり消費者から葬儀を受け付け、提携する専門葬儀社や互助会に葬儀を依頼する。依頼を受けた葬儀社には10~15%の手数料を引いた額が支払われる。

 「葬儀の大切さ」を再認識

 全葬連・松本勇輝専務理事

 コロナ禍での葬儀と、今後の展開について、全日本葬祭業協同組合連合会(全葬連)の松本勇輝専務理事に聞いた。

 --葬儀が小規模化している

 「縁のあった方に最期のお別れができなかったという人が多く出たのは事実だ。この状況なので仕方ないとはいえ、とても残念なことだと感じている。多くの人が4月ごろは「葬儀には行ってはいけない」という気持ちを強く持たれていたようだった。それが5月、6月になって『こういう時期だからこそ、しっかりとお別れをしたい。本当は行くべきではあるのだが』と考える人が増えてきたように感じる。自粛期間があったことで、葬儀の大切さが再認識されたように思う」

 --葬儀の意義、大切さとは

 「人は自分だけで生きているわけではない。いろいろな人とのかかわりのなかで生きている。縁があった人との最期のお別れをする場が葬儀だ。故人の遺志や生きた証をどう継承していくのか。残された家族、親族、知人たちがその後の人生をどう過ごしていくのか。それを確認する場が葬儀だと考える。そして、それをサポートするのが葬儀社の役割だ。このような状況下で、いろいろな規制はあるが、安全、安心に葬儀ができるようにサポートしなくてはならない。きちんと対策をすれば葬儀はできる」

 --今後、葬儀の姿は変わっていくか

 「新しい生活様式が求められるなかで、葬儀の姿も変わっていかざるを得ないと感じている。今回、オンラインを使った葬儀などが登場した。でも葬儀に参列して、故人とお別れをしたいという気持ちの人がいるのに、『オンラインでやるから来ないで』と拒むことはない。例えば、これまでのように一定の時間だけに葬儀をするのではなく、『都合のいい時間に来て、故人とお別れをしてください』というスタイルもあり得ると思っている。どんなお別れの姿があるのか、社会全体で考えていかなくてはならない」(『終活読本ソナエ』2020年夏号から随時掲載)

 葬儀業者がとる感染防止策

 全日本葬祭業協同組合連合会と全日本冠婚葬祭互助協会では「葬祭業、感染拡大防止ガイドライン」を策定している。ポイントを紹介する。

 (1)打ち合わせ時にはソーシャルディスタンス(1メートル以上、可能なら2メートル以上)を確保。適宜、オンラインを併用する

 (2)遺族や会葬者に風邪のような症状がある場合、新型コロナ感染者と濃厚接触がある場合、過去14日以内に入国制限がある国への渡航歴があるなどした場合は来場を控えてもらう

 (3)葬儀会館内に遺族、参列者が入る場合は、手指消毒とマスク着用を

 (4)焼香、線香をあげる際の動線や会場内の座席は距離をとる

 (5)多くの参列者が想定される際は、弔問の時間を長く設定し、焼香、線香のみにしてもらうことも。火葬場などへの移動は、個々が自家用車で行くなど極力3密を避ける

 (6)通夜振るまいなどで料理を提供する場合は大皿を避け、個々に提供することを考える

 (7)通夜後、会館に残る遺族を限定する

 (8)参列できない人のために、映像などの配信や録画等をすることもひとつの方法

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