教育・子育て

大手予備校センター長が教える医学部合格の秘策 「素直にアドバイス聞いて」

 新型コロナウイルスの感染拡大の第3波で医療従事者への注目が高まる中、約30年間にわたって2千人を超える医学部受験生を送り出してきた大手予備校「河合塾」近畿地区医学科進学情報センター長の山口和彦さん(55)が11月、「『心がけ+習慣』でつかむ医学部合格」(河合出版)を刊行した。難易度が高い医学部入試だが、山口さんは「アドバイスを素直に受け入れ、自分を変えられる人は伸びる」と話している。(加納裕子)

 新型コロナでは、最前線で命を救う医療従事者への尊敬が増す一方で、病院でクラスター(感染者集団)が発生するなど危険も認識された。医学部は敬遠されるのだろうか。

 山口さんは「現役生の動向を見る限り、大きく医学部志望者が減少することはないと思われる」。世間の動向に左右されず、地道に医療の道を志す受験生らの姿が浮かび上がる。

 山口さんは「そもそも覚悟が違う」と説明する。医師になるためには医学部に入らなければならず、“すべり止め”の難易度も高い。不合格なら、翌年受験して合格を勝ち取るしかないため合格まで8年かかった人もいたといい、強い決意が必要だ。

 多くの医学部受験生をサポートし続けてきた山口さんが、入塾時の学力以上に合格を左右すると考えるのが「心がけ」だ。それは「人のアドバイスを素直に受け入れ、自分を変えられること」。さらに失敗を悔やむのでなく、「どうしたらできるか」という「肯定形」と「未来形」の考えに変えることで、行動が前向きに変わり、学力も伸びていくという。

 親のかかわり方も重要という。学費の上限など志望校選びにかかわる重要なことをなかなか話し合えない親子もいるといい、山口さんは「お互いに覚悟を決めて話し合ってほしい」。また、「受験生が親に勇気づけられるのは、いつもの食事やあいさつ、笑顔など言葉以外のこと」とも。

 年明けからは一般入試が始まる。山口さんは医学部受験生に「技術だけでなく、自分の人間性や教養にも磨きをかけられる人であれ」と願い、「医療者になり、AI(人工知能)にはできないことを実践して」とエールを送っている。

 今年の医学部受験、移動を懸念?

 医学部入試では医師になる夢をかなえるため、出身地にかかわらず全国の大学を受験する人が多い。だが、今年は新型コロナウイルスの影響もあって地元の大学を優先し、受験校数を減らす傾向がありそうだ。

 鳥取大によると、医学部医学科の学校推薦型選抜の志願者数は69人で、昨年の99人を大きく下回った。鳥取県内の高校卒業(見込み)の者に限定した地域枠(募集人員5人)の志望者は15人と昨年より3人減っただけだったが、出身校を限定しない一般枠(同15人)は昨年の70人から51人に急減したという。

 河合塾の山口和彦さんは「私大の医学部では地元の大学にチャレンジする傾向が特に強く、地区をまたいでまで受験しようとする傾向は低くなっている」と分析。感染拡大防止のために往来自粛を求めた自治体もあり、山口さんは「受験のために全国の大学を訪れることを躊躇(ちゅうちょ)しそうだが、合格のためには自分の科目別の得意・不得意を見極め、全国を対象にすることを勧めたい」としている。

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