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感染経路や濃厚接触者の「積極的疫学調査」 保健所、多忙で対象絞り込みの動き

 新型コロナウイルスの感染拡大で、保健所が感染経路や濃厚接触者を調べる「積極的疫学調査」の調査対象を、重症化リスクのある高齢者施設などに絞り込む動きが出ている。保健所業務が膨大になっていることが背景にあり、調査の負担軽減で効率的な入院や療養先の調整につなげたい考えだ。ただ、調査の対象外となる企業などからは濃厚接触者が分からなくなることへの懸念の声も上がっている。

 調査は感染症法に基づき行われ、感染経路の特定はクラスター(感染者集団)を捉え、感染拡大を防ぐ狙いがある。しかし感染第3波の広がりとともに昨年12月ごろから感染経路不明の割合が全国的に増加、東京都は今月2日~8日の7日間で約68・1%に達した。

 「感染者の体調などの確認を優先した結果、疫学調査が遅れるようになった」と都幹部。東京23区内の保健所の担当者は、「感染経路の調査まで手が回らない」とした上で、「(誰と会ったかを説明したがらない人に質問を重ねて説得する)余裕がなくなっている」と説明する。

 厚生労働省は昨年11月、都道府県などに対し、重症化リスクの高い集団などを優先して調査する考え方を示し、さらに今月8日にはその考え方を柔軟に検討するよう通知した。

 これを受けて都は22日、高齢者や基礎疾患のある感染者に加え、医療機関、高齢者施設、障害者施設などに重点を置いて感染経路や濃厚接触者を調査する方針を保健所に提示。これにより、飲食店や一般企業などでの感染は、原則として詳しく調査しなくてもいいことになった。

 神奈川県も9日から都と同様に高齢者らに優先度をつけた調査の運用を行っている。黒岩祐治知事は「(感染者全員の調査に)労力を割くより、保健所の人的パワーを集中させ効果的に振り向けていく」と理解を求める。ただ、川崎市に企業の総務担当者から「社内で感染者が出た場合にどう対応すればいいのか」などの問い合わせがあるなど、不安の声も寄せられているという。

 こうした声に対し、神奈川県の担当者は「症状が出た場合は県の相談窓口で医療機関を紹介し、医師の判断で公費検査も受けられる。保健所でも濃厚接触者に該当するかの相談にも応じており、不安の払拭に努めたい」と説明。東京都の担当者も「本人から濃厚接触の訴えがあった場合に検査を受ける体制などを、都医師会とも協力して整えたい」としている。

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