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異例の「閣法」修正 特措法早期改正を優先、実効性確保

 新型コロナウイルス特別措置法や感染症法などの改正をめぐる与野党の修正協議は28日、合意に達し、2月初旬の改正案成立が確実となった。改正の最大の狙いは、対策の実効性確保。全国の新規感染者数は今月下旬に入り減少傾向となっているが、予断は許さない。政府は成立を急ぎ、閣議決定した法案(閣法)を国会審議前に与野党で修正する異例の展開をたどった。

(坂井広志)

 「閣議決定されたものを修正しなければならなかったのは極めて残念だった」

 自民党の森山裕国対委員長は28日、記者団にこう語った。過料の引き下げや、刑事罰の削除など、与党は野党の求めに柔軟に応じた。ただ、都道府県知事の権限強化など骨格は維持され、政府・与党は名を捨てて実を取る格好となった。

 支援と罰則

 特措法改正案では知事の権限強化策として、緊急事態宣言下において飲食店などの事業者に休業や営業時間短縮を、現行の「指示」よりも強い「命令」を出すことができるとしている。従わない場合は、前科が残らない行政罰として「50万円以下」の過料を規定していたが、協議の結果「30万円以下」で決着した。

 現行法には事業者支援に関する規定はないため、改正案には「(国と地方自治体は)必要な財政上の措置を効果的に講ずる」と明記した。事業者への支援と罰則の両方を盛り込むことを求めていた全国知事会の意向に沿う形となっている。

 緊急事態宣言の前段階として「蔓延(まんえん)防止等重点措置」を新設したのも改正案の特徴だ。緊急事態宣言下と同様に、知事は時短などの命令を出すことができ、宣言前の措置の新設で機動的な対応が可能になる。

 蔓延防止等重点措置下の過料について、野党側には「必要ない」(立憲民主党の安住淳国対委員長)として削除を求める声があったが、実効性確保を重視する政府側の意向を踏まえ削除はせず、命令に反した場合の過料「30万円以下」は「20万円以下」に引き下げることで折り合った。

 行政罰に変更

 感染症法改正案をめぐっては、刑事罰の導入の是非が最大の争点となった。改正案では入院を拒否したり、入院先から逃げたりした患者に対し、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」と規定していた。昨年7月末、埼玉県内の病院に入院中のコロナ患者が無断で抜け出す事態が起き、厚生労働省幹部は「人にうつすかもしれないことを承知で歩き回るのは刑事罰だ」と語っていた。

 これに対し、一部の有識者からハンセン病患者の隔離政策の歴史を想起させるとして、罰則導入に反対の声が上がった。野党側は、罰則への慎重論が相次いだ厚生科学審議会(厚労相の諮問機関)の感染症部会の議事録を引き合いに出し、「懲役刑は行き過ぎだ」(立民幹部)などとして刑事罰の削除を要求。「50万円以下」の過料という行政罰に変更となった。

 保健所による調査を拒否したり、虚偽の回答をしたりした場合については「50万円以下の罰金」としていたが、「30万円以下」の過料に修正した。感染のつながりを調べるクラスター(感染者集団)対策が、いわゆる「夜の街」で回答拒否などで難航した経緯があり、過料でも罰則導入自体に意義があるといえる。

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