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「ゴールデンカムイ」の“隠れ聖地” 企業城下町にアイヌの宝物 

 アニメにもなった人気コミック「ゴールデンカムイ」(集英社)に北海道・苫小牧市美術博物館が所蔵するアイヌのたばこ入れや矢毒入れが登場し、「聖地巡礼」とみられるファンが同館を訪れている。同館は知る人ぞ知るアイヌ関係コレクションの宝庫だが、巡礼のモデルコースともいえる公的機関主催のスタンプラリーに採用されていない“隠れ聖地”。所蔵品のコミック登場を機に、聖地入りはかなうのか。

 作者の色紙も

 「ゴールデンカムイ」は、日露戦争後の北海道を舞台に元兵士らがアイヌの金塊争奪戦を繰り広げる人気コミック。狩猟や料理といったアイヌの習俗・文化も描かれ、克明に描写された道具類が物語の世界にリアリティーを与えている。

 たばこ入れは昭和56年に同館が購入した。コミックの22巻で砂金堀り師が身に着け、物語が展開する上でのキーアイテムとして23巻にも登場。鮭を担いで歩くヒグマが彫られ、印象的なデザインだ。

 「新型コロナウイルスの影響で今は下火になっているが、たばこ入れが作品に登場したことが伝わった昨年夏から、毎日のように本州から来館者が訪れた」。同館の学芸員がこう話す。

 作者直筆の色紙とともに常設展示され、入館時に申請すれば撮影もできる。同館によると、申請書にたばこ入れを記入する例が本州からの来館者に多くみられた。北海道の“空の玄関口”新千歳空港から、昨年夏に開業した国立アイヌ文化復興拠点ウポポイ(白老町)へ向かう途中に立ち寄る来館者が目立ったという。

 充実展示2つの理由

 別の区画に展示されている矢毒入れも木製で、コミックではアイヌの少女が狩りの準備をする場面でクローズアップされている。

 「実際に使われ、毒が残っている。アイヌ関連資料を数多く展示しているので、『ウポポイのついでに来たが、2時間じっくり見た』などの感想が寄せられている」と学芸員。

 交易などに使われたアイヌの丸木舟が5艘もまとめて見られるのは同館だけ。河川用と海用が並び、迫力満点だ。女性が儀礼で身に着ける首飾り(タマサイ)は質、量とも国内有数のコレクションで、世代を超えて受け継がれた宝物(イコロ)の繊細な輝きが存在感を放っている。

 アイヌ関連資料の充実ぶりには、歴史的な理由がある。丸木舟は昭和41年に市内で発掘され、放射性炭素年代測定の結果から鎌倉末期から室町初期のものと推定されている。近代の苫小牧市は企業城下町として発展したが、かつては太平洋岸から川をさかのぼり、一部陸路を経て日本海側に至る交通路の起点だったからだ。

 充実している理由はもう一つある。アイヌ関連資料の購入時期だ。同館によると、苫小牧市では昭和20年代後半から30年代初頭にかけ、博物館建造を目指して多くのアイヌ資料を収集していた。明治時代から外国人や古美術商の収集対象となっており、まとまって購入できた最後の時代だったという。

 “聖地”入りへ働きかけ

 北海道では、自治体や観光関係団体でつくる北海道観光振興機構が平成30年度から毎年度、アニメ「ゴールデンカムイ」ゆかりの地を巡るスタンプラリーを実施。「博物館 網走監獄」(網走市)や「北海道開拓の村」(札幌市)など道内各地の博物館をチェックポイントとしている。

 たばこ入れなどがコミックに登場して間もない苫小牧市美術博物館は、ラリーに含まれていない。このため、同館は機構に採用を働きかけている。だが、新型コロナの感染状況が落ち着かない中、機構が次年度もラリーを実施できるかは未定。コロナ禍の先行きは不透明だ。(寺田理恵)

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