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作って楽しい、もらっても… エコでもある「おかんアート」の世界 (1/2ページ)

 関西の一部地域では、母親のことを愛情を込めて、おかんと呼ぶ。このおかん世代の女性たちが、余暇ともったいない精神にまかせて作る手芸作品が「おかんアート」だ。牛乳パックで箱を作ったり、余った毛糸で人形を編んだり、作品は多種多様。「もっさりしたもの」という印象もあるが、その洗練されていない造形が味となり、周囲に和(なご)みを与える存在にもなっている。昨年は現代アートとともに展示する企画展も開催され、芸術作品としても評価されつつある…のだろうか。(藤原由梨)

 人生に残された宿題

 「いつか使うだろうと取っておいたボタンや毛糸、空き箱なんかが家にたくさんある。片付けようとそれを使って小物を作るけど、作品に使えるのではといろんなものを集めてしまい、かえって物が増えていく」

 2月下旬、神戸市兵庫区の駄菓子店「淡路屋」。近くに住む新居(にい)光子さん(70)と藤岡純子さん(70)がアクリルたわしや、不要になった空き缶に、毛糸で編んだ人形をかぶせて作った貯金箱などを披露して笑う。

 この日は、近所の“おかんアーティスト”らが集う、月1回のおかんアート大学の日。平成21年に神戸で始まったおかんアート展の出品者らが集まり、新作の情報共有に加え、おかんアーティストが講師を務める作り方教室も開催する。若手も呼び込み、次世代の育成にも余念がない。

 人生の宿題となっている…

 なぜ、おかんたちは手芸作品を作るのか。おかんアート歴6年ほどの新居さんは、「若いころは、子供の服やカバンなど必要な物しか作らなかったけど、今は時間にも余裕ができたからね。やりだしたら夢中になる」。

 藤岡さんは「私たちの世代はもったいない精神が強いから、簡単には物を捨てられない」。集めた身の回り品を「人生の宿題」と表現し、「目の前から消えんと、人生の宿題が残っている感じ」と創作意欲をかき立てている。

 おかんアート大学の発足は、神戸の下町、兵庫や長田を街歩きする団体「下町レトロに首っ丈の会」(同市兵庫区)による下町遠足ツアーがきっかけだった。同会の会長で、淡路屋の店主、伊藤由紀さん(51)と甲南女子大学准教授の山下香さん(46)が17年に始めたもので、2年が過ぎたころ、ツアーで巡った各家庭に、さまざまな手芸作品が置かれているのに気付いた。

 有名キャラクターをイメージした人形でも、家庭にある素材で再現するので、色もデザインもオリジナルとは程遠い。作品の点数は多いが、何のために必要なのか、はっきりしないものもある。

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