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(2)白内障をスマホで遠隔診断 慶大発ベンチャー「ウイインク」開発

 慶応大医学部の清水映輔医師はパソコン画面に映し出された目の拡大映像を指さした。「黄色く濁ってますね。白内障の恐れがあります」。映像は遠く離れたアフリカのコンゴ(旧ザイール)から送られてきた。

 眼科検診は通常、専門医が特殊な検査機器を使って行う。専門医がいなかったり、本格的な機器がなかったりする地域では難しかった。可能にしたのは、スマートフォンに簡単に装着できるレンズが付いた医療機器の存在だった。

 清水医師は眼科専門医であると同時に、慶応大発のベンチャー企業「ウイインク」(東京)代表の顔も持つ。同社が開発した機器は縦2.6センチ、横7.3センチで3Dプリンターを使って作成する。現地で映像を撮影し、離れた場所にいる医師らに専用アプリで送信し、診断してもらう仕組み。ベトナム、モンゴル、マラウイなどで実証実験をし、日本でも検査機器として登録された。

 東京・竹芝桟橋から船で6時間半の東京・三宅島。島の中央診療所ではこの機器が既に実用化されている。目がかすんで見えにくくなったという前田モトエさんは昨年10月、カメラを使った遠隔検診を受けた。

 撮影したのは診療所の水田志織医師。専門は救急だ。映像を送信して約15分後、清水医師から返信が来た。「白内障です。手術が必要なレベルです」。水田医師は「専門以外の患者が診察に来た場合、診断に確証を持てないときもある。遠隔地でも専門医に診てもらえるのはとても心強い」と話す。

 三宅島に眼科医は不在で、島外から眼科医が検診に来てくれるのは4カ月に1回しかない。急ぎの診察が必要な場合でも「船に乗って行くのはとても大変。島で診てもらうのが一番いい」と80代の前田さんは喜んだ。

 第5世代(5G)移動通信システムなどテクノロジーの進歩に加え、新型コロナウイルスの流行で、オンライン診療が普及しつつある。離島など医師不足の地域では、遠隔医療の導入で離れた場所にいる専門医が身近な存在になれば安心につながる。

 清水医師は人工知能(AI)を活用し、白内障の重症度を判別できる機能も開発した。白内障は早期発見すれば失明しなくてすむ。世界を見渡せば眼科医がいない地域も多い。「2025年までに世界中で失明してしまう人を半分に減らしたい」と夢を語った。

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