教育・子育て

コロナで出席停止、学習遅れをオンラインで防ぐ 「GIGAスクール構想」で身近に

 学齢期の子供が新型コロナウイルスに感染したり濃厚接触者になったりした場合は、無症状でも一定期間は学校を休まなければならない。こうした子供たちの学習の遅れを防ごうと、オンライン授業を行う学校が増えてきた。今年度末までには、文部科学省の「GIGAスクール構想」で全国の小中学生に1人1台の学習用端末が配備される見通しで、コロナ禍で遠隔授業はより身近になってきた。(木ノ下めぐみ)

 「おーい、見えてる?」「うん、顔が映ってるよ!」

 2月上旬、奈良県生駒市内の病室で、タブレット端末をのぞき込んでいた小学1年の女子児童(7)がうれしそうに手を振った。画面には、小学校の教室にいる級友の姿。女児は「入院していても友達と会えてうれしい」と笑顔を見せ、母親(43)はほっとした表情を浮かべた。

 1月下旬に同居する祖母のコロナ感染が判明。無症状だった母子は濃厚接触者としてPCR検査を受けた結果、ともに陽性と判明し、保健所の指導で小児病棟のある病院の同じ病室に10日間入院した。欠席期間は「出席停止」扱いとされた。

 母親は学習の遅れを心配したが、生駒市では昨年のうちに全児童生徒にタブレット端末を配布済み。女児が通う小学校では昨年12月から欠席児童にオンライン授業を実施しており、病室にはインターネット環境もあったため、女児も毎日1~2時間参加できた。民間の学習指導「スタディコーチ」(東京都)が感染児童に無償提供したオンライン指導も活用し、「出席停止期間も充実した生活を送ることができた」と話す。

 文科省は先月、感染症の拡大時や災害などの「非常時」に児童生徒が学校にいけない場合、自宅でのオンライン学習を特例の授業として認めることを全国の教育委員会などに通知。生駒市では新型コロナに感染したり、濃厚接触者と特定されたため出席停止となったりした児童生徒には、オンライン授業を積極的に行うよう各校に呼び掛けている。

 女児が通う小学校の教頭はオンライン授業について「少しでも子供とつながることで、家庭へのケアができる」と手応えを語る一方、「教室には教員が1人しかおらず、オンライン教材も少ない。1日中つないですべての授業を視聴できるようにするのは難しい」と課題を挙げた。

 端末納入・習熟にはばらつき

 文部科学省によると、昨年6月~今年1月に新型コロナウイルスに感染したとの届け出があった児童生徒は1万2107人。感染や濃厚接触者とされた児童生徒は欠席ではなく、「出席停止」扱いとなる。

 登校できない児童生徒の「学びの保障」として、同省は同時双方向型のオンライン指導を推奨。だが、担当者は「まだ端末の納入中という学校が多く、現実にはそこまでの指導を求めるのは難しい。プリントなどアナログ教材での対応が多いのではないか」とみる。

 昨夏に同省が全国の自治体に行った調査では、99・6%が年度内に児童生徒1人1台分の端末納入が完了すると回答。ただ、年度末の2~3月に納入予定とした自治体が58・5%に上り、オンライン授業の実施にはばらつきがあるのが現状だ。

 福岡市では昨年5月下旬、臨時休校後の学校再開のタイミングで、貸与した端末や各家庭のパソコン活用も含めて全小中学校でのオンライン授業実施体制を整えた。主な対象は、既往症や感染への不安などから登校を控える児童生徒だ。

 同市では児童生徒のコロナ感染が判明した場合、その児童生徒の最終登校日から1週間は学級閉鎖とする。閉鎖期間中は全員に1日3時間程度のオンライン授業を実施しており、同市の担当者は「臨時休校中、学びの保障ができなかったことを踏まえ、対応を急いだ」と説明する。

 大阪市は今月末までに全小中学校で端末を導入する計画だが、担当者は「現時点ではコロナで休んでいる児童がオンライン授業に参加できているケースはほとんど聞かない」と明かす。大阪府吹田市は1月中旬までに市内の小中学校全校で端末の配備が完了したが、まだ「習熟度を高めている段階」(同市教委)といい、担当者は「パスワードの入力方法を教えるところからのスタート。オンライン授業の前に、教えなければならないことがたくさんある」とした。

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