教育・子育て

「歴史総合」「公共」「情報I」…新科目、問題解決力養う工夫随所に

 文部科学省が30日に検定結果を公表した高校教科書。学習指導要領改訂に伴う科目の再編を受け、来年春からは「歴史総合」「公共」「情報I」などの新科目の授業が本格化する。教科書づくりの羅針盤となったのは、指導要領が掲げる「主体的・対話的で深い学び」。その理念を具体化した各社の記述には、知識の習得とともに課題解決に臨む姿勢を培うユニークな工夫が随所に見られた。

 現行の歴史科は小中学校が日本史中心の授業であるため、高校では世界史が必修、日本史は地理との選択科目となっている。これが見直され、日本史と世界史の近現代史を統合した新必修科目「歴史総合」となる。従来の時系列で学ぶ歴史と違い、世界と日本の相互影響を捉え、現代の課題と結び付けた内容だ。

 中村学園大の占部賢志(うらべ・けんし)教授(教育学、歴史学)は「一国の動きだけでは善悪二元論に陥りがちになる。日本は他国と接触しつつ模倣ではない独自の文化を形成してきた。広い視野がなければ、日本史の深い理解はおぼつかない」と話す。

 例えば、帝国書院では、日露戦争の学習でロシア側の動きも追う。敗戦で極東進出を取りやめたロシアが目指したのは、欧州東南部のバルカン半島。要衝地をめぐりドイツとの対立を深め、第一次世界大戦へとつながっていく経緯を描写し、「日本史と世界史、相互の影響を読み取れるようにした」(編集担当者)。

 図や資料が多用されたのも特徴だ。東京書籍は、東京・銀座を描いた明治初頭の錦絵と昭和11年、平成29年の写真を見比べるコーナーを設け、都市の変遷についての読み解きを求めた。

 公民科では、現行の「現代社会」に代わる新設の「公共」が必修科目となる。正義や自由といった抽象概念や社会の仕組みを、知識だけでなく、現実の世界をどう構想していくかという観点から踏み込む。

 1つしかない血清を毒ヘビにかまれた子供や妊婦、知人など立場の異なる5人の誰に打つか-。帝国書院では、正義や公正をめぐる答えのない問いの議論を求めるコーナーを設けた。「思考実験」と呼ばれる手法で、新指導要領が複眼的な視点を養うための新たな切り口として取り上げるように求め、各教科書にさまざまな題材が掲載された。

 教育図書では、眠くないのに親から寝るように促された生徒の不満そうな様子を漫画にして掲載。ルールがなぜあるのかを身近に考えさせる工夫が見られた。

 新設必修科目「地理総合」が扱うテーマは、地図や気候、人口・食料問題などの地球的課題、防災まで多岐にわたるが、知識だけでなく思考力の訓練を促す観点が目立つ。東京書籍は見開きで、アジアを中心に27カ国の工業労働者賃金や工業団地賃料、業務用電気料金などの一覧表を掲載。地図も活用しつつ、データを読み解き、メーカーの一員として海外生産拠点を選定する課題を掲載した。

 新指導要領では情報教育が大きな柱の一つとなる。新設の必修科目「情報I」は6社12点の教科書が合格した。いずれも情報の真偽を疑う姿勢や知的財産権に対する態度などセキュリティーやモラルに関する解説が充実。例えば、数研出版は大規模な個人情報流出を報じる新聞記事を掲載し、懲戒解雇や損害賠償、罪に問われる場合もあることを明記し、注意を促した。

 一方、プログラミングは全ての生徒が学ぶことになるが、指導教員の不足など学校現場に課題が山積している現状もあり、教科書の重要性は極めて高い。

 専門的な内容を分かりやすく解説する工夫が見られた。第一学習社は、基本的知識である「アルゴリズム」(処理手順)を文化祭の模擬店を場面に、ベッコウアメをつくる手順になぞらえて説明していた。

 また、指導要領が目標としているのはプログラミング技術者の養成ではなく、「情報社会に主体的に参画するための資質・能力」だ。日本文教出版が章末に設けた演習課題には、ワクチン接種で予防できる感染症を題材に、免疫の有無や発症人数などのデータを基に論理的に考えさせる内容で、プログラミング的思考を身近な問題に落とし込む視点がうかがえた。

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