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(198)脳梗塞の原因はいろいろ

 脳卒中は年間約25万人が発症すると推計されており、近年ではその4分の3を脳梗塞が占めています。脳出血や脳梗塞は50代以降で発症が多く、特に高齢者で多くなります。脳卒中を起こした人の半数以上が死亡もしくは介護が必要な状態となるので、私たちにとっては非常に大きな問題です。

 脳出血の予防で一番大切なことは血圧の管理です。高血圧にならないためには減量、減塩、節酒、運動が重要です。もし高血圧になってしまったら降圧薬をきちんと服用しましょう。脳梗塞は通常は動脈硬化が進行することで起こります。動脈硬化を進める主な原因としては糖尿病、高血圧、脂質異常症、喫煙がありますが、こういったことと関係がないところから脳梗塞を起こすこともあります。

 60代後半の女性が家族に付き添われて受診しました。つい先ほどから呂律(ろれつ)が回らず、手に持っているものを落としてしまったりするというのです。糖尿病や高血圧などを指摘されたことはないそうですが、心房細動という不整脈が出て病院を受診したことがあるとのことでした。すぐに救急車を手配して病院へ搬送したところ、診断は脳梗塞でした。治療とその後のリハビリで、麻痺(まひ)はほとんど残らないところまで改善しました。

 心房細動とは、心臓の上の部屋(心房)が痙攣(けいれん)したように細かく動いてしまうものです。心房細動が続いたときに心房内に血栓(血の塊)ができ、それが血流に乗って脳の血管に詰まってしまうことがあります。血栓を予防するためには血液を固まりにくくする抗凝固薬を服用する必要があります。

 78歳の別の女性は脳梗塞の既往があり、脳梗塞の予防薬や降圧薬を飲んでおり数値は良好でした。しかし1年ぶりに撮影した脳のMRIで新たな梗塞がいくつもできていました。本人にもう一度よく聞いてみたところ、実は過去に肺動静脈奇形を指摘されていたことがわかりました。この病気は肺動脈と肺静脈が異常な形で繋(つな)がってしまっているもので、やはり血栓ができる原因になります。血管カテーテルによる塞栓術を受け、その後は問題なく経過しています。

 自分では思いもしないところから脳梗塞を起こすこともあります。特に心房細動は高齢者には珍しいものではなく、体温測定のほか、血圧や脈、体調など他の体の兆候にも目を向けるとよいでしょう。また既往症は診察の時にはすべて伝えるようにしましょう。

 (しもじま内科クリニック院長 下島和弥)

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