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東日本大震災、「大規模盛土造成地」で起きた知られざる被害

 東日本大震災で津波以外に最も大きな被害を受けたのが、傾斜地に造成された宅地「大規模盛土造成地」だった。国土交通省は昨年、全てに危険性があるわけではないとしながら、全国に5万1306カ所あると公表。激甚化する災害で地盤災害は頻発しており、専門家は地盤を知ることの重要性を指摘する。(石田征広)

 「日本一安全な団地になったよ」。真新しい住宅が立ち並ぶ仙台市青葉区折立5丁目に震災前から住む安達光男さん(80)は、自宅の周囲を見渡しながら感慨深そうに話した。

 同地区は昭和48年、東北自動車道仙台宮城インターチェンジの西隣にある蕃山(ばんざん、356メートル)の北側斜面に造成された。住宅は傾斜地の「擁壁(ようへき)」に囲まれた土台の上に段々に建てられ、5丁目は「く」の字状のかつての沢の上に位置していた。

 震災の激しく長い揺れによって、造成前の地盤「地山」と、その上の「盛土」の境界面で、水が媒介した「滑動崩落」という地滑りが発生。宅地約2・5ヘクタールが深さ約8メートルの盛土ごと最大約2・5メートル滑り落ちた。

 造成地内の水抜きが不十分だったのが原因とみられ、土台を失った住宅は1階部分が壊れ、大きく傾いた。折立5丁目の住宅全60戸中43戸が全壊判定を受け、震災で5728カ所にも達した仙台市内の宅地の地滑りで、最大規模の被災地となった。

 同地区を調査した東北工業大の千葉則行名誉教授(地盤地質学)は「仙台市は西側の内陸に行くほど古い地層で地盤が固く振動が小さくなる特徴がある。折立地区を含む東北道西側の大規模盛土造成地の滑動崩落は東日本大震災が初めてだった」と明かす。

 滑動崩落の防止対策を講じた宅地の復旧には1戸当たり1000万~1500万円と見積もられたが、国は平成23年11月、公共工事で被災宅地を復旧させることを決定。総工費約8・6億円の復旧工事は27年3月末に完成した。1戸当たりの負担は十数万円に抑えられた。仙台市で地滑りが起きた5728カ所の宅地で、滑動崩落が起きた大規模盛土造成地は2521カ所。88%に当たる2221カ所が復旧した。

 造成地での地滑りや地割れは、震災後も相次いだ。熊本地震や北海道胆振(いぶり)東部地震、西日本豪雨や台風19号でも大規模な地盤災害が発生。国土交通省は昨年3月末、全国に大規模盛土造成地が5万1306カ所あることを初めて公表。それを受けて1741市区町村も「大規模盛土造成地マップ」を公表した。

 宅地評価額を変動させ、混乱を招くとして未公表だったマップの公表で大規模盛土造成地の所在は分かった。だが、安全性の確認と滑動崩落防止対策はこれから。公表された大規模盛土造成地が直ちに危険というわけではないが、地震や水害など災害の多い日本で対策は急務だ。東北学院大の飛田善雄教授は「怖いのは地震ではなく地盤。被災を避けるため、土地の履歴を知ることは重要だ」と警鐘を鳴らす。

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