書評

『東京パンデミック 写真がとらえた都市盛衰』山岸剛・著

 ■モノに語らせる人のありよう

 黙示録のようなフォトエッセー。舞台はコロナ禍の東京。それも江東区の中央防波堤のような都市のエッジ、すなわち際(きわ)、自然と対峙(たいじ)する場所で気鋭の写真家が思索し、シャッターを切る。モノクロ写真に人は写っていない。建造物と雑草が主体だ。

 《主体はあくまでモノである。モノを撮って、モノの理(ことわり)を解き、モノをして語らしめる写真である》と著者。作品から何が読み取れるか。人間の傲慢か、モノのたくましさか、それは人それぞれだろう。明確なのは、モノこそがそこに生きる人間のありようを冷酷かつ正確に表現しているということだ。(早稲田新書、990円)

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