教育・子育て

ほっとできる生徒の居場所を 高校内に「第3の居場所」カフェ続々誕生

 家でも教室でもない、子供たちの「第3の居場所」として、学校内に民間団体などが運営するカフェを設置する取り組みが広がっている。約10年前に大阪府立西成高校(大阪市西成区)で始まったのを皮切りに、各地の高校が導入。生徒の抱える課題や困難にいち早く気づいて支援につなぐセーフティーネットであると同時に、子供たちにとっては教員や保護者以外の大人とおしゃべりしながら、ひと息つける場所となっている。(地主明世)

 「久しぶり! このお菓子もらってもいい?」

 春休みが明けた4月8日午前11時ごろ。西成高校の一角にある「となりカフェ」に、女子生徒が声を弾ませて入ってきた。

 室内のテーブルには同校に寄付された菓子やコーヒー、お茶などが並び、無料で楽しめる。放課後には30人近くが集まることもあり、生徒らはボードゲームや読書をするなど思い思いに過ごす。

 常連の男子生徒(18)は「教室よりもラフな空間で落ち着く。放課後に立ち寄ってから帰る」。別の女子生徒(18)も「教室では話せないことをスタッフの人には話せる」と打ち明けた。

 先生以外の大人に

 となりカフェは生徒の中退を防ごうと平成24年にスタートし、今年で10年目を迎えた。一般社団法人「officeドーナツトーク」(大阪市阿倍野区)が運営。週2日程度、昼休みと放課後に校舎の一室を開放し、月1回は朝の始業前にも開く。教員が立ち入ることはなく、相談室よりも気楽な雰囲気とあって、家庭や人間関係の難しさ、摂食障害といった深刻な悩みを打ち明ける生徒もいる。

 同校の山田勝治校長は「以前は非行に走ったり喫煙をしたり学校が荒れていた時期もあったが、今はおとなしい生徒が多く、なかなか口を開いてくれないこともある。カフェで癒やされ、ポロッとこぼすつぶやきは大切だ」と話す。

 ドーナツトークのスタッフは、必要に応じて学校に配置されている福祉の専門家に生徒をつないだり、行政の窓口を紹介したりすることもある。精神保健福祉士の奥田紗穂さん(31)は「生徒の話をほじくり返さず、でも少し踏み込んで聞く。先生以外の大人がここにいると知ってほしい」。生徒支援を担当する教諭は「生徒とスタッフの間に利害関係がないのがいい。カフェで心を支えられ、抱えているしんどさを和らげながら、なんとか卒業していく生徒もいる」と話した。

 大阪府教委などによると、校内にカフェを設置する動きは年々増加。現在、府立高校14校で同様のカフェが運営されている。

 外部の力を借りる

 横浜市立高校で28年に初めて導入されたのが、市立横浜総合高校(同市南区)の「ようこそカフェ」だ。公益財団法人「よこはまユース」(同市中区)などの民間団体が週1回運営している。

 同校は3部制の定時制高校。生徒は千人以上、教員約130人という大規模校で、病気や障害、不登校経験、経済的な困窮といった複雑な背景を持つ生徒も多い。食事を取れていない生徒もいることから、「少しでも腹持ちの良いものを」と食堂を活用し、地元の料理研究家がみそ汁やスープを無料で提供。カフェは毎回200人以上が訪れる憩いの場となった。

 同校の小市聡校長は「学校だけでは対応できない問題が満ちあふれており、外部の人の力を借りることはとても有効だ」と語る。

 ただ昨春、新型コロナウイルス禍の臨時休校の際にはカフェも閉鎖。生徒らとの結びつきが一時的に断たれた。よこはまユースの尾崎万里奈さん(35)は「普段から信頼関係を築いて接点を作っておかないと、いざというときに何もできないと気付いた。取り組みを継続することが大切」と話す。

 川崎市も、来年度にはすべての定時制高校にカフェを設ける予定で、今後も各地で取り組みが広がりそうだ。

 大阪府立大の山野則子教授(児童福祉)は「助けを必要とする生徒は、本人にその自覚がなかったり、恥ずかしいという思いがあったりして、自分から声を上げることは少ない」と指摘。「教員がカフェなどの支援に生徒をつないでいく意識を持つことが大事だ」と強調する。

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