ヘルスケア

ベッドに空きも…入院調整追い付かず「待機」 感染者急増深刻

 新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない東京都では、確保病床の使用率が半分程度にとどまっているにもかかわらず、「入院待機」を余儀なくされる患者が増え続けている。感染者増加のスピードに入院や療養先の調整が追い付かないことが一因で、受け入れ側のスタッフ不足も深刻な状況だ。医療提供体制の崩壊を避けるため、医療関係者は感染者が急増する若年層に感染防止対策を重ねて呼び掛けている。

 都内の新型コロナ感染者の入院は3日時点で3351人で、5967の確保病床に占める割合は56・2%。数字上は半分程度が空いているが、同日時点の「入院・療養など調整中」の人数は8417人に上る。

 ベッドが空いているのに入院できないのはなぜか。中等症から重症者までを対象とした56の病床を抱える日本大学板橋病院(板橋区)の高山忠輝病院長補佐は「感染者の急増に入院調整が追い付いていないのではないか」と指摘する。

 中等症には呼吸不全で鼻からの酸素投与などが必要な「重症予備群」も含まれ、同院では3日時点で、重症と合わせ37人が入院。15人程度で推移した6月から2カ月で約2・5倍に増加した。

 前日の2日には、15人の搬送要請があったが、同院が1日に対応できる患者数を上回ったため、断らざるを得ない患者もいたという。医師や看護師らスタッフの数は限られ、確保病床が埋まりきっていなくても受け入れに限界が生じているのが現状だ。

 コロナ患者は病状が変化しやすく、頻繁なモニタリングが必要となる。医師ら10人以上の連携を要する人工心肺装置(ECMO)などを使用する重症患者の場合、同院では中等症患者の3倍の医療スタッフが必要になる。

 40~50代の入院患者が中心となった今は重症化せずに回復し、退院する患者も多く、入退院の手続きにも多くの時間が割かれているという。56床を全て使用するためには、看護師を補充する必要があるといい、高山氏は「ベッドがあってもスタッフがいなければ成り立たない」と話す。

 また、昭和大学病院(品川区)の相良博典院長は、検査の判定がついていない段階の疑似症例でコロナ病床に入院している事例もあると指摘。「実際には数字よりも多くの病床が使われていると考えられる」と強調する。

 都内では感染第3波がピークを迎えた今年1月、病床使用率が約9割に達し、入院調整ができないまま死亡する感染者が出た。そのため、都は入院調整を滞らせないように、感染者自体を減らすことが重要として感染防止対策の徹底を強調している。都医師会の猪口正孝副会長は感染者の約7割を占める30代以下の若年層に対し、「感染者数が増えることで、入院調整などの労力が増えることを自覚していただきたい」と呼び掛けている。

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