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「家族同然」ペットの祈祷 市谷亀岡八幡宮、人とペットの垣根を取り払う

 【いきもの語り】犬、猫、ウサギ、小鳥、亀、ハムスター、イグアナやヤギまで…。1月の寒空の下、JR市ケ谷駅そばにある市谷亀岡八幡宮には、さまざまなペットが集合していた。飼い主と一緒に「茅の輪くぐり」をし、社殿の前にお行儀よく着席。装束に身を包んだ神職がおはらいを始める。その様子は、人が参列する祈祷(きとう)となんら変わりがない。

 「ペットは人と同じように、家族同然なんです」

 そう語るのは、ここでペットの祈祷を始めた禰宜(ねぎ)、梶正樹(まさき)さん(59)だ。犬や猫のための初詣や七五三の祈祷を行うなど、「ペットのための神社」としても知られている。

 市谷亀岡八幡宮がペットの祈祷を始めたのは、20年ほど前のこと。知人や友人らから要望を受け、ペットのお守りを作ったのがきっかけだった。犬が首に巻けるバンダナ型のお守りや、飼い主が携帯電話やリードに付けられるキーホルダー型のお守りを販売。これが好評を博すと、さらなる要望に応えるため、祈祷も始めた。

 祈祷は初詣や七五三のイベントのほか、年間を通じて個別でも執り行っている。初詣だけでも600~700組が訪れるといい、需要の高さがうかがえる。

 なぜそれほどまでに人気なのか。梶さんは「ペットが近年、家族同然の存在になったからだ」という。祈祷を始めた20年ほど前、時を同じくしてペットブームが到来した。それ以前は、ペットというと番犬のようなイメージがあったが、いつの間にかペットは家の中に入り、家族のような存在になった。

 そうなると、自然とペットに対し「病気になってほしくない。長生きしてほしい」という思いが芽生える。お守りや祈祷の需要が高まるのも、「自然発生的だったのではないか」と梶さんは分析する。

 祈祷中には動物ならではのハプニングもある。祝詞(のりと)を読んでいる最中に犬がほえたり、鳥が暴れたりする。中断しながらも、個別祈祷ではペットにも社殿の中に入ってもらっている。

 7、8年前からは年に1度、「ペットの慰霊祭」も執り行っている。飼い主に向けて、死んだペットとの向き合い方や、ペットと人の縁について、神道の観点から説明する。

 以前、愛犬の病気治癒を願って祈祷を受けたが、その後に愛犬が死んだ人がいた。その人が慰霊祭で「お祈りをしたおかげで、苦しまずに逝くことができました」と、泣きながら感謝を伝えてきたという。

 「愛情を注いだペットを失うのはつらいこと。それでも『今までありがとう』という気持ちでいないと、ペットは安心して成仏できない」と梶さんは説く。

 「ご祈祷はペットの健康長寿、手術成功、交通安全などをお祈りできる。基本的に各回1組ずつの個別で対応しており、いつも心を込めて丁寧にご祈祷している」。500年の歴史を持つ神社が、人とペットの垣根を取り払う。(浅上あゆみ)

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