教育・子育て

リモート授業、定着は道半ば 教育のICT化急務

 新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言が19都道府県で9月末まで延長され、臨時休校の継続や分散登校を取り入れる自治体も目立ってきた。感染症の専門家は、学校生活による接触機会の増加が感染拡大につながる可能性があるとみており、オンラインによるリモート授業は、感染対策と教育活動を両立させるための不可欠な試みだ。ただ、学校現場への定着はまだ道半ば。コロナ収束後や、コロナとの一定の「共存」も見据えた教育のICT(情報通信技術)化は急務の課題となっている。(玉嵜栄次)

 双方向指導は3割

 「リモートで授業を行い、登校しないことがベストだ」。緊急事態宣言が延長された茨城県の大井川和彦知事は9日の記者会見でこう述べ、県内の自治体に休校措置の継続を求めた。

 水戸市では小中学校と義務教育学校の全48校の臨時休校を26日まで延長。小学6年以上ではオンライン授業を午後まで拡大して対応する。つくば市も26日まで市立学校の休校を続ける。

 一方、東京都の足立区立校では13日から対面授業を再開。各家庭の判断でオンライン授業の選択も認め、小学生の16%、中学生の11%がリモートを選んだ。

 10月1日まではこうした対応を続ける方針。ただ、約4万5千人の児童生徒を抱える同区では、一部の学校にタブレットなど学習用端末の配備が完了しておらず、区教育委員会の担当者は「リモートを希望する子供に優先的に端末を配布した」と明かす。

 オンライン授業は休校期間に学習を継続する主力ツールとなるが、感染拡大の「第5波」で休校措置を取った自治体のうち、同時双方向のオンライン指導を実施したのは約3割。昨年時点からは増えたものの、定着しているとは言い難い。

 オンライン授業を行った都内の公立小の女性教員(38)は「短期間なら何とかしのげるが、低学年への導入などリモートの特性を生かした授業には時間がかかりそうだ」と語った。

 地域間の格差課題

 文部科学省による全国調査では、自治体間で学校現場のICT環境に大きな格差が生じていることが明らかになっている。児童生徒1人1台の学習用端末配備はコロナ禍で加速したが、教室の通信環境整備では2倍以上の開きが目立つ。教員の指導力の違いも顕著で、自治体にはハードとソフトの両面でICT化の底上げが求められる。

 調査は、全国の公立小中高校など約3万3千校と教員約76万人を対象に実施。3月1日時点で都道府県別にICT環境の整備状況や教員の指導力を確認した。

 普通教室の無線LAN整備率は6県が9割台で、トップは徳島の98・5%。三重95・7%、兵庫92・7%と続いた。8割台は大阪など17府県、7割台は東京など15都道県。最低だったのは広島の47・1%で、平均値(78・2%)を大きく下回り、徳島とは2倍以上の格差が生じていた。

 ハード面の格差は「自治体の教育予算を反映している」(文科省)ため、教育にかける意識の高さの尺度と読み取ることもできる。

 例えば、徳島県立校の普通教室の無線LAN整備率は100%で、広島県立校の30・1%とは3倍超の差がある。徳島県教育委員会では平成28年度に県立校教員に1人1台のタブレット端末を配備。教室でも活用できるように通信環境を整えた。

 こうしたハード面の状況は、教員の指導力にも影響を及ぼす。徳島県は授業にICTを活用した指導力でも89・1%で全国トップ。県教委によると、定期的に教員ごとのICT活用の課題分析を行い、基礎から応用まで個人に応じた研修を実施してきたという。

 もっとも、文科省は10年ほど前に学校現場に電子黒板などの導入を推進したが、十分な指導力の底上げを果たせなかった。ハードの整備が、必ずしも教員の質の向上につながるわけではない。文科省は「外部人材を活用し、教員らと連携して授業を進めるといった意識の変化が必要となる」と指摘。令和4年度予算の概算要求でも、学校のICT化を支援する「GIGA(ギガ)スクール構想」の強化を打ち出している。

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