ヘルスケア

コロナ後遺症、働き盛り直撃 大阪では相談数が増加 

 新型コロナウイルスの新規感染者数は減少傾向をみせている中、感染「第5波」の影響を受けて後遺症に苦しむ人が増えている。医療機関などによると、働き盛りの世代が目立つようだ。後遺症は未解明の部分が多く、確立された治療方法もない。対応できる医療機関の数も十分とはいえず、後遺症は日常生活を取り戻すためのハードルになっている。

 「しんどくて、自分の体ではないという感覚」。8月にコロナに感染した奈良県の50代男性は、コロナ感染自体は軽症と診断されたが、せきや微熱といった後遺症に悩まされ、職場復帰もままならないという。

 陽性が判明し7日間自宅待機した後、宿泊療養施設に10日間入り、症状が落ち着いたことから退所した。だが、自宅に戻って数日でせきが出始めた。階段の上り下りのほか、話をしていても息苦しい。体温は日中、37度台になる。

 後遺症を疑い、専門外来を探したが、なかなか見つからなかった。かかりつけ医には「保健所に相談してほしい」と言われ、保健所からは総合病院の受診を勧められた。最初に連絡した病院には「呼吸器の専門医がいない」と断られた。男性は「社会から取り残されてしまった思いがした」と振り返る。

 男性は最終的にインターネットで隣県の大阪府内にある邦和病院(堺市中区)の後遺症外来を見つけ、9月上旬に受診した。

 同病院は4月に後遺症外来を開設。9月半ばまでに240人以上の後遺症患者を診察した。和田邦雄院長によると、外来に訪れるのは30~50代の働き盛りの世代が目立ち、症状は倦怠感(けんたいかん)、味覚や嗅覚の障害、息切れ、せきが多いという。

 新型コロナの後遺症は人によって症状がさまざまなこともあり、不安を訴える人も少なくない。和田院長は「症状を抑える対症療法を行うとともに、データを示して体の状態を分かってもらうことで不安の解消につなげている」という。

 奈良の男性に対しても、症状を確認したり、CTスキャンの画像を見たりしながら「ここから良くなっていく。今の症状なら仕事は休んだ方がいい」と指摘。男性は「しっかりと診察してもらい、安心した。こんなに後遺症が長く続くなんて、コロナにかかるのは二度と嫌だ」と話していた。

 大阪府によると、男性のような後遺症に悩む人の相談が増加している。

 府では新型コロナ受診相談センターで7月から、後遺症の相談受け付けも開始。7月の相談件数は282件だったが、8月には344件に増えた。府健康医療総務課は「9月はそれを上回るペースで相談が寄せられている」とする。

 一方、7月中に寄せられた、具体的な内容を伴う相談(208件)を詳しくみると、働き盛りの世代30~50代で全体の58・6%(122件)を占めた。主な症状(複数回答)は倦怠感が最も多く63件。嗅覚障害53件▽味覚障害44件▽脱毛40件▽呼吸苦31件-などと続いた。

 府によると、9月7日時点で、府内60の医療機関で後遺症の受診が可能だが、「コロナの後遺症は診療科を幅広くまたがる症状も多く、治療方法も体系化されていないため、対応できる医療機関はまだ少ない」(同課)。このため府は、後遺症の診療体制整備につなげようと、医療機関に対して後遺症の情報提供を行うなどの対応を進めている。(藤谷茂樹)

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