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信玄の父、武田信虎を映画化 暴君否定し再評価へ

 戦国武将、武田信玄の父、武田信虎を描く映画「信虎」が完成し、今秋公開される。暴君だったとされるが、この定説を覆し、信玄の上洛を心待ちにし、信玄亡き後は武田家存続に取り組んだ晩年の姿が中心だ。甲斐国の統一、甲府開府などの功績も含め、信虎を再評価する動きが出ている中で、新たな信虎像が映画で描かれる。

 ベテラン36年ぶり主演

 映画「信虎」は、「デスノート」や平成「ガメラ」シリーズなどで知られる金子修介監督(66)がメガホンを取る。

 信虎役はベテラン俳優の寺田農さん(78)。寺田さんにとっては36年ぶりの主演だ。上杉謙信役を映画「天と地と」でも演じた榎木孝明さん(65)、信玄役、武田逍遥軒の1人2役を永島敏行さん(64)という実力俳優が固める。今年4月に64歳で亡くなった隆大介さんも出演し、遺作となった。

 歴史考証は武田家研究で知られる歴史学者の平山優さん(57)が担当。武田家の武将の髷や甲冑、衣装、旗や所作なども再現を試み、ディティールにこだわっている。

 悪逆非道の君主、覆す

 信虎は粗暴で傲慢な性格で、諫言(かんげん)した家臣を手討ちにしたり、残虐な行動が多かったと伝えられ、暴君、悪逆非道の君主とされてきた。映画ではそういった伝承、通説を覆す。

 主人公の信虎は信玄から駿河に追放された後、京都で足利将軍に仕えていた。80歳になっていた信虎は信玄の上洛を心待ちにしていたが、信玄が危篤に陥っていることを知る。武田家での復権の好機と考えた甲斐への帰国を目指す信虎。信玄が死に、勝頼が後を継いだことを知ると、自身が返り咲くことが武田家を存続させる道と勝頼らに説くが、織田軍との決戦にはやる勝頼に退けられる。それでも、武田攻めの最中だった上杉謙信に武田攻めをやめるよう求める書状を届けるなど、武田家存続のために知略を働かせる。

 「物価上昇が背景」

 平山さんは「信虎がいなければ、信玄の時代は来ず、武田家の飛躍もあり得なかった」という。信玄による信虎追放についても「物価上昇などの経済的な疲弊が追放の要因」と分析し、暴君説を否定する。

 当時の甲斐国は、敵に囲まれ事実上経済封鎖された上、凶作などで物価高騰や飢饉(ききん)が起き、領民の反発が高まっていた。こうしたなかで、危機感を抱いた信玄とその周辺が、信虎を追放する無血クーデターを起こし、批判を信虎へと向けたとみる。信玄が徳政を実施する中で、信虎を悪しく評価する歴史になっていたと推測する。

 信虎をめぐっては、甲府商工会議所が「甲斐国の府中、『甲府』」をつくったとして、信虎にスポットを当てたイベントを平成30年末から実施。甲府駅北口のよっちゃばれ広場に信虎像を建立したほか、「信玄のパパ 武田信虎のほんとの話」の漫画を作成するなど、再評価の取り組みを行っている。

 燎原の火のように

 このほど、主役の寺田さん、金子監督、平山さんらが、信虎が開いた躑躅ケ崎館(つつじがさきやかた)の跡地でもある武田神社(甲府市)で作品のヒット祈願を行った。

 祈願後、寺田さんは「信虎は戦略家であり、優れた政治家だった。この映画で、これまでの信虎像は変わり、日本人が歴史を勉強する良い機会になればうれしい」と強調。「甲府を起爆剤にして燎原(りょうげん)の火のように全国に広がってもらいたい」と話している。

 映画「信虎」は11月12日に全国公開となるが、「TOHOシネマズ甲府」(昭和町)では10月22日から先行公開される。(平尾孝)

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