賛否両論がかまびすしかったWeb連載マンガ『妻の飯がマズくて離婚したい』全30話が完結した。数多のサイトで取り上げられていたので(“妻の飯がマズくて離婚したい”でググると123万件がヒットする)、全話でなくても「目にしたことはある」という向きは少なくないだろう。
じつは、料理下手の妻を題材にした連載はこれが最初ではない。10年ほど前まで、「週刊モーニング」でも『嫁のメシがまずい! Meshi-mazu』と題したコミックエッセイが連載されていて、筆者は毎週けっこう楽しんで読んでいた。
『妻の飯がマズくて離婚したい』の主人公は「お腹に入れば何でも同じ」が口癖で、定番のおかずは不味い野菜炒めなのだが、『嫁のメシがまずい! Meshi-mazu』には、「メシマズ嫁」に泣かされている夫が2チャンネルの「既婚男性板」に書き込んだ空前絶後の珍レシピがこれでもかと言わんばかりに登場する。イカ墨の代わりに墨汁を使ったイカ墨風パスタ、玄米を漂白剤で脱色した白米、ポカリスエットで炊いたご飯、みそ汁の具にバナナ、牛乳の代わりに母乳を入れたハンバーグ…。
『嫁のメシがまずい! Meshi-mazu』のレシピについては、一部は創作なのかもしれないが、『妻の飯がマズくて離婚したい』レベルの不味い料理の話は、実際に夫の側から聞かされたことがある。
「嫁さんが料理下手で困っている」と言うので、「たとえば?」と水を向けたところ、「どうやれば、インスタントラーメンをあんなに不味く作れるのか?!」と怒っている。なんでも、裏面に書かれている作り方を読もうとせず、水の量はいい加減、麺のゆで時間は勘、味見もせず適当に調味料を加える…といった具合で、とても食えたものではないという。インスタントラーメンがこれでは、あとは推して知るべしだろう。
料理が上手くならない人は「頭が悪い」?
これは筆者の私見ではあるが、料理(調理)が上手くならないのは、食べることに興味がないとか人生において食(生活)は重要ではないという考えの持ち主でない限り、よっぽど不器用なのか味音痴なのか、でなければ「頭が悪い」からだ。
ここで言う「頭が悪い」とは、計算や暗記が苦手とか論理思考力が弱いといった一般的に学力の基礎となる能力のことではなく、試行錯誤や創意工夫が苦手、問題解決力や向上心に欠けるといったことを指している。仕事に置き換えると、PDCAができないということだ。
閑話休題。そこで今回は、「子どもに料理(調理)させてみると学習能力や学力を伸ばす上での弱みが見えてくる」との論点(仮説)について、その方法や効果も含めて考えてみたい(以下、中学受験生を対象とする)。
学ぶ力を見極める―子どもに料理させるときのポイント
まず、なにを作らせてみるか? 小学生に魚を捌かせたり揚げ物をさせたりするのはさすがに危なっかしい。包丁や火力は使わせたいところだが、時間が掛かりすぎるものや電子レンジで完結してしまうものは避けたい。かつ、本人が食べたいもの(好きなもの)で、何度か作るなかで工夫の余地があるものが望ましい。
となると―ホットケーキ、焼きプリン、生地からピザ、おでん、オムレツ、親子丼、ハンバーグ…といろいろと考えられる。作るものは子どもに選ばせ、レシピと材料は親が用意する。
そして、ここが最も肝心なところなのだが、親は絶対に手を出さない。やってみせるのはよいが、代わりにやるのはNG。親から口を挟むのも絶対にNG。質問にだけ答えるようにする。とにかく子どもだけでやらせ、手を出したくなっても我慢する。