パキスタン水質汚染、健康被害が深刻化 未処理の生活用水利用

2013.11.21 06:00

 パキスタンで水の汚染問題が深刻化している。工場排水などが河川に流れ込み、飲料水に混入していることが要因だ。政府が浄水施設を設置している地域もあるがほとんど効果がなく、住民の健康に影響を及ぼしている例もあるという。現地英字紙エクスプレス・トリビューンなどが報じた。

 国連機関が2012年に実施した調査によると、パキスタンは都市部で62%、地方で84%の国民が未処理の水を飲料水など生活用水として利用している。その結果、毎年25万人の子供が水質汚染が原因の病気で死亡している恐れがある。

 大人を含めた年間の全体の死者数のうち、汚染した水を摂取したことが一因だとされる事例は4割にも上るという。

 パキスタン政府は外国政府や国際機関の支援を受けて浄水プラントを設置するといった対策を講じているものの、電力不足でプラントが稼働しないなどの状況が続いている。

 東部パンジャブ州では国連の支援で総額2000万ドル(約20億円)のプラントが設置されたが給水所から供給された水を飲んだ住民が失明などの重度な健康被害を受けた例が報告された。

 また、政府が7億5000万パキスタンルピー(約7億円)を投じてプラントを設置したシンド州南部キンジャール、ジンピール地域でも調査の結果、生水が正しく濾過(ろか)されずにフィルターを通過し、飲料水に混入していることが判明。

 キンジャール湖は最大都市カラチに飲料水を供給する水源でもあり、短期的には近隣の300万人、長期的にはカラチの2000万人に影響を及ぼすことが懸念されている。

 現時点でもカラチでは水質への懸念や不安定な供給体制から安全とされる水の違法取引が日常化しており、1日当たり2億7500万ガロン、金額にして約1億パキスタンルピーの水が不正に取引され、取引額のおよそ1割が闇社会に流れているとされる。

 このほかにも、パキスタン国内では人口増による1人当たり供給量の減少や、外国による上流のダム建設などが原因の河川の水位低下など、水をめぐる問題が次々に顕在化している。

 アシフ水利・電力相は「今後10年から15年以内に深刻な水不足に陥る可能性がある」と述べ、政府として水の確保に注力する姿勢を明らかにした。安全な水の安定供給が実現できるかどうか、政府の覚悟と手腕が問われているといえそうだ。(ニューデリー支局)

閉じる