増える独身女性のマンション購入 売却視野に資産価値を重視

2015.11.28 17:10

 女性の社会進出や晩婚化に伴い、マンションを購入する独身女性が目立ってきた。かつては一生住み続けることを考慮して購入する人が多かったが、最近は「結婚したら、売ったり貸したりすればいい」と柔軟に考え、資産価値のある物件選びをしているという。女性向けのセミナーなども増えている。(油原聡子)

 女性向けローン

 今月中旬、東京・丸の内で女性のマンション購入をサポートする「女性のための快適住まいづくり研究会」(東京都目黒区)が主催するセミナーが開かれた。20~60代の参加者66人は、講師を務める同研究会の小島ひろ美代表のマンション購入に向けた資金計画の立て方や注意点に関する説明に耳を傾けた。

 参加者の一人、東京都中野区の派遣社員の女性(34)は現在、賃貸マンションに住んでいる。家賃は月8万円だ。「賃貸では何も残らない。お金を払うなら自分の資産として残したい」と、マンションの購入を検討中だ。

 女性の社会進出に加え、安倍晋三政権の経済政策、アベノミクス効果で、独身女性のマンション購入意欲が高まっている。同研究会の会員は、平成20年に4万8千人だったが、26年は7万5550人に増えた。小島代表は、「最近は女性向け住宅ローンもある。派遣社員や契約社員でもローンが組みやすくなったことも後押ししている」と指摘する。

 20代でも

 かつては、独身女性がマンションを購入すると、「結婚をあきらめた」と思われがちだったが、今は違うようだ。

 女性向けの不動産紹介サイト「ノムコム・ウーマン」を運営している、野村不動産アーバンネットの板垣香織さんは「今は結婚したり、家族が増えたりした場合には、売却することなどを視野に入れたうえで購入する女性が多いですね」と話す。

 購入者層も広がっているという。以前は40歳前後のキャリア女性が多かったが、今は20代の女性や派遣社員など幅広い。「家賃がもったいないと考え、資産形成として捉えています」と板垣さん。

 同社が今年6月、独身男女156人を対象に実施した調査で、住まい探しのきっかけを尋ねたところ(複数回答)、女性は「賃貸よりも持ち家のほうが金銭的に得」と「もっと好条件の家に住みたい」がともに31・9%で1位だった。

 資金計画を

 独身女性がマンションを購入する場合、重要なのが資産価値だ。10月の横浜市のマンション傾斜問題発覚後、「女性のための快適住まいづくり研究会」のセミナー参加者は1・3倍に増えた。小島代表は「問題をきっかけに購入前にしっかり勉強し、資産価値の高い物件を選ぼう、という意識が一層、高まった」と話す。新築では建物の欠陥を事前に見抜くのは難しいが、中古物件ならば、専門家に住宅診断を依頼してもいい。

 結婚や出産などライフスタイルの変化を考慮し、「貸したり売ったりしやすい物件を選んだほうがよい」と指摘するのは、ファイナンシャルプランナーの大竹のり子さんだ。

 まず大事なのは立地だ。駅から徒歩5分以内の物件は特に需要が高い。地域の特性を知るのも大切だ。「ファミリー層が多い地域なら2LDK以上、シングルが多い地域なら1LDKのニーズが高い。需要に合う物件ならば売却もしやすい」と大竹さんは話す。

 また、しっかりとした資金計画を立て、将来に備えたい。毎月のローンの返済額と管理費や修繕積立金を合わせて、手取り月収の3割以下が目安だ。大竹さんは「住居費は一番大きい固定費。ローンを組むときは、慎重に考えて」とアドバイスしている。

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