「電気自動車」普及スピードアップ 航続距離向上、インフラ整備も進む

2016.4.2 17:03

 走行中に二酸化炭素(CO2)を全く排出しない電気自動車(EV)。バッテリーの性能向上で1回の充電で走れる航続距離が延び、充電設備などインフラ整備も進んだ。遠出をするのにも不自由が少なくなってきた。一方、水素を燃料として、走行中に水しか出さない燃料電池車(FCV)も登場。地球温暖化の一因とされる二酸化炭素を出さない「ゼロエミッションカー」の普及に弾みがつきそうだ。

 不自由感じない

 千葉市の会社員、杉本容一さん(51)は平成24年1月に、一戸建ての自宅に充電設備を設置し、日産自動車のEV「リーフ」を購入した。4年間の走行距離は約8万キロ。「以前乗っていた排気量3千ccのガソリン車では年に1万キロほどだったが、倍に増えた」

 自宅での充電にかかる電気代は月千~2千円。外での充電には日産ディーラーの充電器を自由に使え、定期点検なども含め月3千円のプランに加入。「前の車はガソリン代が月2万5千円ぐらいだった。今は倍の距離を走って月4千~5千円だから、燃料費は10分の1になった計算」と満足げだ。

 カタログ値の航続距離は200キロ。実際に走れる距離は状況にもよるが、150キロ前後だ。「高速道路のサービスエリアには充電器があるし、街中ではカーナビゲーションですぐに見つかるので、全く不自由は感じない」と杉本さん。

 280キロ

 日産がリーフを発売したのは22年12月。これまで国内で5万7千台、世界で20万台を販売した。昨年12月の改良で、上級モデルはカタログ値の航続距離が280キロに延びた。マーケティング・ダイレクターの井上幸彦さんは「バッテリーを大容量化しつつ、コンパクトにする技術が大きく進んだ。大半の人が1日に乗る距離はカバーできる」と強調する。

 国内メーカーでは、三菱自動車も軽自動車のEVを販売しているほか、独BMWなど海外メーカーのEVもある。次世代自動車振興センターの調べでは、国内の電気自動車の保有台数は、27年3月末時点で約7万700台と右肩上がりだ。

 外出先で使う充電器は、ディーラーのほかにスーパー、コンビニ、道の駅などでの設置が、このところ急速に進んだ。住宅地図のゼンリンの調べでは、30分程度で充電できる急速充電器と、低電圧で数時間かかる普通充電器を合わせると、全国の設置基数は28年1月末時点で1万9570基。過去2年弱で2倍以上に増えた。

 一方、トヨタ自動車が26年12月に発売したFCV「MIRAI(ミライ)」は、注文が殺到し納車まで数年待ちの状況。ホンダも29年度以降に個人向けにFCVを発売する見通しだ。今後は車両価格の引き下げや水素ステーションなどのインフラ整備が課題になりそうだ。

 モータージャーナリストの舘内端さんは「地球温暖化の問題を考えると、ゼロエミッションカーへの移行は避けられず、米国や欧州では急速にその動きが広がっている」と指摘。「中でもインフラやコストの点でEVは先行している」と話している。

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